「シジミさん、優勝です」と、トキに賞品のヴードゥー人形を授けるヘブン (C)NHK
「シジミさん、優勝です」と、トキに賞品のヴードゥー人形を授けるヘブン (C)NHK

今週放送された連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合ほか)第8週「クビノ、カワ、イチマイ。」では、7週までのドラマチックな展開が嘘のように、「何も起こらない日常」が描かれた。

■「ヘブンクイズ大会」いったいなぜ?

ヘブン(トミー・バストウ)の女中となったトキ(髙石あかり)は、ヘブンが所望する「Beer」が何だかわからず、琵琶、ビワ、粟、ひえ、びく、サワ(円井わん)などを用意するが、どれも違う。この、ビールをめぐる“モノボケ”や、ヘブンから教わり、トキの周辺でにわかに流行り出したスキップなど、「瑣末」と言ってしまえばそれまでなのだが、細かな笑いがそこここに散りばめられた週だった。

その極めつきが、11月21日に放送された第40回の「ヘブンクイズ大会」だ。この「クイズ大会」回はいったい何がどうなって生まれたのか、制作統括の橋爪國臣さんに聞いた。

■ヘブンの来し方を説明的にならずに見せるために、ふじきみつ彦が提案

「プロットの時点で脚本のふじきみつ彦さんが『クイズ大会をやりたい』と言いました。ヘブンが登場して早4週目になりますが、きっとまだ彼がどんな人なのか、わかりにくいと思うんです。小泉八雲の史実を知っている人ならば、ヘブンがどんな経緯でニューオーリンズを通って日本に流れ着いたのかが想像できるけれど、そうでない人にはわからない」

「言ってみれば現時点のヘブンは、愛せるキャラクターなのか否かを含め、『よくわからない、偏屈な外国人』。そんな彼のバックグラウンドや人となりを、どうやったらわかりやすく、説明的にならずに、なおかつ面白おかしく見せることができるかと、ふじきさんが考えて『クイズ大会』のアイデアが生まれました」

■「英語指導の先生が『これ、外国人には絶対伝わらないよ』と。そりゃそうですよね」

出題時、クイズ番組の出題でかかる「デデッ!」というアタック音に似せた「ヘブン!」が笑いを誘った。この「ヘブン!」はアドリブなのだろうか。

「台本にはヘブンの台詞のところに『(「ジャジャン!」で)ヘブン!』とだけ書いてありました。本打ち(脚本打ち合わせ)で『これは……そういうことですか?』とふじきさんに聞いたら、『そういうことです』と(笑)」

「現場で『これどうする? 残す? 残さない?』という話にはなりましたし、当然、時代考証の先生からは『あり得ない』と言われました。英語指導の先生からは『これ、外国人には絶対伝わらないよ』と(笑)。そりゃそうですよね。でも『役者がしっかり演じれば、ちゃんと面白さが伝わるはずです』と、先生方にお話をして、納得していただきました」

さらに、昭和から平成あたりの日本のクイズ番組やバラエティ番組を見ていた人でないとわからない演出については、

「モデルであるラフカディオ・ハーンもジョークが大好きで、お祭りやパーティーも好きだったという記録が残っています。そんなハーンの茶目っ気をヘブンに注入して、少しおちゃらけるようなシーンがあってもいいのではないかと考えました。史実にしっかり基づく必要がある部分と、ドラマならではの演出にしてもよい部分があると、僕は思っていて。クイズのシーンに関しては、楽しく見せることができればよいのではないかと判断しました」

とコメントした。

■学生役の3人が細やかないい芝居をしていた

さらに、撮影現場の様子については、

「クイズのシーンはほぼ丸1日かけて撮影したのですが、キャスト、スタッフ含めてみんな『このシーン本当に面白くなるのかな?』と不安でしたし、半面、期待もしていました。どう仕上がるのかドキドキでしたが、編集してみたらとても笑えるシーンになっていたので、ほっとしました」

「台詞はほとんど台本通りで、アドリブはほぼないのですが、学生役の3人(錦織の弟・丈役の杉田雷麟、正木役の日高由起刀、小谷役の下川恭平)が、ただクイズをやっているだけではなく表情や声のトーン、それから絶妙な間でいいお芝居をしているので、ぜひそこにも注目していただければ」

と語った。

次週、第9週「スキップ、ト、ウグイス。」ではヘブンに恋するトキの“ライバル”が登場するが、果たしてどうなるのだろうか。

(まいどなニュース特約・佐野 華英)