元保護猫の男の子「しじみ」くんは、飼い主のXユーザー・しじみとんさん(@shijimiton)が初めて保護した子です。出会いは2020年8月。当時のしじみくんは生後推定2カ月ほどの小さな子猫でした。
その頃、飼い主さんは悲しい出来事に見舞われ、心が沈む日々を送っていたといいます。そんななかで出会ったしじみくんは、のちに飼い主さんの人生をそっと照らし返してくれる存在になりました。
「近所で見かけた生後まもない子猫、それがしじみでした。とてもおとなしく、ご飯を食べるのにも他の猫に先を越されて遅れをとっている様子だったんです。少しずつ距離を縮めていったので、思ったよりすんなり保護することができました」
外の過酷な環境のなかで必死に生きようとしていたしじみくん。そんな姿を見て心が動いたことが、飼い主さんにとって最初の“大きな一歩”になったのです。
■猫中心の生活に…次々とご縁が訪れた
しじみくんを迎えてから、飼い主さんの生活はがらりと変わりました。初めての猫との暮らしは予想以上に学ぶことが多く、毎日が「初めて」の連続だったといいます。
「動物病院探しから始まり、自宅の環境を整えるために何が必要か、接し方やご飯にいたるまで、何もかもが手探りの状態でした。しじみの反応に一喜一憂しながらも、毎日がとても楽しくなりましたね」
試行錯誤しながらも、しじみくんと向き合う時間は、落ち込んでいた心を少しずつ押し上げてくれました。やがてその変化は、飼い主さんの家族にも広がっていきます。
「すっかり、しじみ中心の生活に。驚いたのは、妻がしじみのためならと財布の紐がゆるくなったことです。夫婦そろって、しじみにメロメロになりました」
そして、この出会いが次のご縁へとつながりました。翌年にはみとんちゃんを、その2年後にはあんこちゃんを保護し、家はますますにぎやかに。ただ、3匹は仲良しというよりは「ひとつ屋根の下のご近所さん」に近い距離感なのだそうです。
「くっついて眠ることもありませんし、お互いに毛づくろいし合うこともありません。血のつながったきょうだいだと、また違うんでしょうか」
一方、人間に対しては、それぞれに“小さな基準”があるようにも感じるといいます。
「お返事をしてくれるときの声量や、夜、布団で一緒に眠れる人は誰か、ご飯のときに誰の膝上に乗るかなど…猫それぞれ人間に対して相性があるようにも思えます」
3匹との暮らしは驚きの連続で、飼い主さんにとっては学びと発見の積み重ねの日々でした。
■猫も人間も同じ家族ーーしじみくんと歩んだ5年
現在、しじみくんは5歳。小さかったころと同じく、とてもおとなしく、穏やかな性格だといいます。
「一番古株になりましたが、のんびりしていて怖がりですね。大きな音が嫌いなので、雷が聞こえてくると、床にくっつくほど伏せながら、そろりそろりと歩いて隠れる場所を探し回ります。人間には絶対に爪を立てない、とても優しい子です」
3匹のなかで唯一の男の子でもあるしじみくん。しかし“家で一番強い”かといえばそうではありません。大きな顔をしてみせると、すかさず女子チームのみとんちゃんとあんこちゃんからツッコミが入り、押し切られてしまうこともあるそうです。
そんな3匹に囲まれて日々を過ごす飼い主さんが、今、強く感じているのは「家族としての一体感」。
「我が家では、猫も人間も平等。ご飯を用意する代わりに、抱っこさせてもらったり、猫吸いさせてもらったり…同じ家族という感覚で暮らしています」
しじみくんとの出会いをきっかけに、飼い主さんの世界は大きく広がりました。暮らしに灯りがともり、家族が増え、日々の喜びが積み重なっていくーーそんな5年間だったことが、言葉の端々から伝わってきます。
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)
























