同級生の女からは「トン子」と呼ばれた学生時代……(東山わかるさん提供)
同級生の女からは「トン子」と呼ばれた学生時代……(東山わかるさん提供)

かつて後悔したこと、もう一度リベンジしたいことを持つ方も多いでしょう。東山わかるさんの作品『恋を描くには君知らず』では、自分の人生にリベンジしたい主人公が描かれています。同作はX(旧Twitter)にて約6,000ものいいねを集め注目されました。

西澤トモコは、高校のクラス会が4年ぶりに開かれると聞き居酒屋にやってきました。高校時代は地味だったトモコですが、卒業後に美女へと大変身を遂げます。

そんなトモコに対し男子は鼻の下を伸ばし、女子はマウントを取ろうとしてきて、その様子を見たトモコは「あの頃おまえら全員わたしのことバカにしてたじゃん」と思うのでした。

とはいえ「見返してやりたい」わけではなく、トモコが願っていたのは「自分の人生に復讐(リベンジ)する」こと。そのために一生懸命勉強し、大学合格後は必死にトレーニングに励んだのです。

しかしどんなに見た目を取り繕っても、トモコの心は満たされませんでした。

そんな飲みの席のなか、ひとりの男子が「久しぶり、隣いい?」と声をかけてきます。誰だか思い出せないトモコに「西澤さんも好きなんでしょ?絵」と高校時代の思い出を語りかけてきました。

実はトモコは高校に絵が飾られたことがとても嬉しかったものの、誰にもそのことを伝えていませんでした。それなのに彼ははっきりと覚えており「西澤さんの絵、好きだった」と正面から伝えてきたのです。

トモコはその瞬間、「わたしはあの日からずっとその言葉を待っていたんだ」と気付いたのでした。

同作に対しSNS上では「こういうの大好き!」「そう言われたら自己肯定感があがる」などの声があがっています。そこで作者の東山わかるさんに話を聞きました。

■何歳になっても自分の人生に対するリベンジはできる

-トモコが復讐したい相手を「他人」ではなく「自分」にしたきっかけを教えてください。

この作品はもともと、漫画のスクールで課題として描いたものでした。その時に出されたお題が「復讐」で、最初は誰か他人に復讐するという前提で内容を考えていました。しかしどれだけ考えても何も思い浮かばずどうしたものか…と悩んでいたところ、復讐って自分に対するリベンジと捉えることもできるなとふと閃き、そこから色々とアイデアが出てこのような形になりました。

他者に惑わされず自分の人生をより良く生きること、自分の人生に満足すること。それこそが自分の人生に対するリベンジだし、何歳になってからでもそのような心のあり方を選ぶことは可能なんじゃないかと思います。

主人公のトモコにもそうあって欲しいと願って本作を描いています。

-東山さん自身は、今と昔でイメージががらっと変わった人に出会ったことはありますか。

あまりないと思います。

生きていれば少しずつ変わっていくのは当然なので「少し変わったな?」程度のことならよくありますが、ガラッと変わったようなケースにはあったことがないような気がします。

わたしはいつも自分のことで精一杯なので、他の人たちが変わったかどうかということを深く気にしてないというのもあるかもしれません。

-読者に伝えたいことを。

作品を読んでくださってありがとうございます。読者の存在があってはじめて漫画は完成すると思っているので、わたしにとって読者さんは大切な存在です。皆さんに楽しんでもらえるような作品をこれからも届けていきたいです。応援よろしくお願いします。

(海川 まこと/漫画収集家)