多頭飼育崩壊から唯一生き残ったちくわくん(画像提供:やくまろさん)
多頭飼育崩壊から唯一生き残ったちくわくん(画像提供:やくまろさん)

シャムトラの男の子「ちくわ」くんは、多頭飼育崩壊の現場から救われた元保護猫。死と隣り合わせの過酷な環境から、ただひとり生き残ったのがちくわくんでした。今は、Xユーザー・やくまろさん(@89maro_neko)と穏やかな毎日を過ごしています。そんな大切な“家族”との出会いは、どのようなものだったのでしょうか。

■悲惨な環境から救出ーー胸に迫る出会いの背景

譲渡会のケージに、ひとりぽつんと入っていたちくわくん。その光景が、飼い主さんの胸に強く刻まれました。

「ちくわを迎えたのは2024年8月4日。当時、生後推定3カ月でした。他の猫は数匹一緒にケージに入っていましたが、ちくわだけひとりで入っていたのが印象に残っています」

その後、自宅へ連れて来てもらった際に、驚くべき事実を知らされます。

「ちくわは多頭飼育崩壊から救出された子で、保護前日、きょうだい猫はみんな亡くなってしまったということでした」

迎え入れた初日は、不安と緊張が入り混じるスタートでした。けれどちくわくんは、そんな心配をそっと和らげてくれました。

「急に環境が変わると排泄ができない子も少なくないと聞いていたので心配しましたが、ちくわはすぐにトイレを使ってくれたんです。『この子は大物だぞ!』と喜んだのを覚えています」

とはいえ、過酷な環境を生き抜いた背景を思うと、小さな命の行く末が気にかかる日々が続きました。

「きょうだいが亡くなるほど悲惨な環境にいたので健康状態への不安がありました。まだ小さかったこともあり、お迎えから半年くらいは心配しながら過ごしたのを覚えています」

ちくわくんは、毎日少しずつ、確かな成長を見せてくれました。飼い主さんは体調の変化に気を配りながら、その歩みを静かに見守りました。

「去勢手術のタイミングで受けた健康診断で問題が無いことがわかったとき、心からホッとしました」

■成長にともない行動に変化も… 見守り続けた日々

ちくわくんの存在は、飼い主さんの生活にも良い変化をもたらしました。

「一緒に暮らすようになってから、部屋の掃除をまめにするようになりました。何でも後回しにするクセを改めて、ちくわのために生活環境を整えることを意識し始めたように思います」

当初は「人見知りしない子だ」と感じていたちくわくん。しかし、成長とともに少しずつ行動に変化が見られるようになったといいます。

「いろいろなことを学び理解していったからか、だんだんと人見知りするようになり、警戒心も強くなりました」

生後6カ月頃までは来客にもまったく動じなかったちくわくんですが、ある時期を境に反応が変わりました。

「それまでは来客があっても気にせず歩き回っていたのに、今では玄関のチャイムが鳴るや否や、ソファやベッドの下に隠れて出てこなくなりました」

とはいえ、その変化が体調に影響を及ぼすことはなく、ちくわくんは毎日元気に過ごしています。

「食欲が無くなるようなことはまったくないので安心しています。今も、ちくわの心や体の変化には目を配りながら暮らしています」

■たくましく成長したちくわくんへーー飼い主さんが伝えたい言葉

8月5日、1歳を迎えたちくわくん。飼い主さんの愛情をしっかり受けながら、上手に気持ちを伝える術も身につけてきました。

「小さいころから元気いっぱいでしたが、今も遊ぶのが大好き。とても賢い子だなと思います。何かしてほしいことがあるときは鳴いたり、ぬいぐるみをくわえて来たり、ときには猫じゃらしをポンポン叩いてアピールします。人間に自分の気持ちを理解して行動してもらう方法を心得ているようです」

ただ、来客に対しては今も慎重な様子を見せることがあるといいます。

「宅配業者のかたが来て荷物を受け取ったあと部屋へ戻ると、遠くから様子をうかがっていることも多々あります。内弁慶なところもあるようです」

九死に一生を得た過去の面影は、今の暮らしの中にはありません。「大切な命を守りたい」という飼い主さんの想いは、日々の営みをそっと温かく包んでいます。

そして迎えた1回目の“うちの子”記念日。Xに綴られたメッセージには、ちくわくんへの深い愛情がにじんでいました。

「『猫、来たぞ~』って言ってから1年経ちました。うちに来て最初の体重測定では2.3キロでしたが、もう4.6キロ。今日もいっぱい遊んで、いっぱい食べていっぱい寝ようね」

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)