保育者・親支援団体TAMOTSUでプレゼンターを務めるおさむらいせんせいさん。公立保育園に勤めながら講師としても活動
保育者・親支援団体TAMOTSUでプレゼンターを務めるおさむらいせんせいさん。公立保育園に勤めながら講師としても活動

帝国データバンクの発表によると2025年上半期、保育園の倒産や休廃業は22件。前年同期の13件を大幅に上回っており、年間を通すと過去最多を更新する可能性が高い。

これは待機児童が社会問題となった2010年代から行政の政策により施設数が急増したが、少子化の影響で園児の確保が困難になったことが要因とされる。

そんな難局に置かれた保育業界だが、保育士たちの中にはこんな時だからこそ意識を高く持とうと自主的に保育イベントや交流イベントを立ち上げる人が増えているようだ。

保育者・親支援団体TAMOTSUのプレゼンターで、2024昨年11月に奈良県で野外保育イベント「親子園」を立ち上げたおさむらいせんせいもその一人。親子園はミュージシャンや運動教室指導員、アーティスト、寿司職人など各ジャンルの専門家が子どもに体験の機会を提供し、親や保育士が子どもたちの自発的な遊びを見守るというもの。親と保育士の交流、相談の場としても機能している。

ーー親子園を立ち上げた経緯は?

おさむらいせんせい:親子園は子どもたちを真ん中に置き、保育士、専門家、親の三者が作用し合いながら保育を行える関係性を作り上げることを目的としています。

現役保育士として、日々保育を行なう大変さを感じていました。その大変さとは何かを考えた時に、保育士の持つ専門性に範囲内と範囲外があることに気づいたんです。

範囲内とは、子どもが楽器演奏やお絵かき、体操などこれから生きる世界や社会の面白さや、楽しさに気づけるようなきっかけを感じることができる知恵や技術を与えること。範囲外とは音楽、芸術、運動などのより高度な専門性です。

保育士の中にも専門的なスキルを持った人はいるのですが、そこに手を伸ばしすぎると本分である保育がおろそかになりがち。なのでそこは各分野に特化した専門家におまかせして、保育士と作用し合う形で範囲内と範囲外を両立させたいと思いました。

保育士と専門家が協力して親をサポートすることで、親自身の子育てへの当事者意識ややりがいをさらに高めることができると考えています。

ーーこれまでのイベントで印象的な反応は?

おさむらいせんせい:ある親御さんから、お子さんが「ママ!僕ここであの子と遊んでいるから、ママは向こうでコーヒー飲んできていいよ」と言ってくれたという声がありました。親子園では初めて出会った子どもたちをたくさんの大人が見守っていますが、その環境下ではケンカや暴言、子どもに対する大人の強い関わりが全く見られませんでした。大人も子どもも安心してこの空間で過ごしてもらえたんだなと感じています。

親子園には決まったスケジュールがなく、大自然の中で子どもたちが魅力を感じた専門家ブースに立ち寄り、思い切り遊びます。斜面を利用した運動遊び、寿司職人による寿司作り体験、楽器や音楽を通じた遊び。センサリープレイ(感覚を刺激する芸術的な遊び)等々。暇そうにしている子どもは一人もいませんでした。最後に多くの子ども達から「帰りたくない」と言う言葉を聞くことができたのはとても嬉しかったです。

ーー保護者からの反響は?

おさむらいせんせい:これまで2回のイベントを開催しているのですが、大勢の方に「楽しそうに遊んでいる我が子の姿を見て幸せな気持ちになりました」と言っていただき、我が意を得た気持ちになりました。

また親御さんたちの間でも交流が生まれているようです。普段なら子どもから目が離せないパパやママたちですが、イベントの中では少しだけそこから離れて私的な時間を作ることができるんですね。子育ての悩みや趣味の話、仕事の話など語り合って共に育児に挑む仲間になってもらえればと思っています。

◇ ◇

親子園は現在、来年の第3回開催に向けて準備中。Instagramでその経過などさまざまな情報を発信しているので、ご興味ある方はぜひチェックしていただきたい。

またこのようにより良い保育への志を持ったイベントは全国各地で開催されているようだ。読者のみなさんも身近でどんなイベントがあるのか、興味を持ってもらえると幸甚だ。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)