ミラノ・コルティナ冬季五輪のフィギュアスケート女子で銀メダルを獲得し、今季限りでの引退を表明している坂本花織選手(25)=シスメックス、神戸市灘区出身。持ち前の明るさと笑顔で、今回の五輪ではチームジャパンを引っ張るムードメーカーの役割も担いました。一方、21年に及ぶ選手生活は、笑顔の裏で重圧と闘い続ける日々でもありました。そのスケート人生を、彼女の過去の発言からひもときます。
「オリンピックに出たいという思いが強くなった」
4歳でスケートを始めた坂本選手。2013年12月、神戸市立渚中学1年の時にはソチ五輪選考会を兼ねた全日本選手権にシニアに交じって参戦し、ショートプログラム9位、総合15位と健闘しました。トップ選手のハイレベルな戦いを目の当たりにし、五輪の舞台への憧れを強くします。
「(踏み切りから着氷までの)ジャンプの幅は誰にも負けない」
2016年11月には、全日本ジュニア選手権で初優勝。女子選手の中で群を抜くジャンプの高さや飛距離という強みを、既にこの頃には自覚していました。
そのジャンプを可能にする跳躍力について当時、次のように自己分析しています。
「(幼少期の)移動手段はジャンプだった。ぴょんぴょん跳ねていたので、小さい頃から鍛えられたのかな」
元気印の坂本選手らしいエピソードですね。
次第に世界で戦う上での問題意識も芽生えていきます。
「まだ世界では戦えない」(2016年12月、ジュニア・グランプリファイナルで3位となり)
「この演技じゃ絶対上に行けない」(2017年11月、西日本選手権で優勝するも、ジャンプでミスが出て)
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そして2018年2月、高校2年の17歳で、初五輪となる平昌大会に出場。「いつもの5倍ぐらい緊張した」というプレッシャーの中で6位入賞を果たし、次なる目標を描きます。
「4年後の北京(五輪)ではメダルを狙えるレベルまで頑張る」(帰国後、神戸野田高校での報告会で全校生徒を前に)
同時にトップ選手への階段を昇るほど、重圧は増していきました。
「相手に勝とうと意識してしまった。まず自分に勝てるように」(2019年2月、四大陸選手権でショートプログラム2位から2連覇を狙ったがフリーで合計4位に後退し)
「これだけ練習したから大丈夫、と思えるくらい練習した」(2020年12月、好成績が出ず苦しんだ前季から朝・昼・夜の3部練習で追い込んできたことを振り返り)
「これだけ練習して、本番でできない。情けない」(2020年12月、全日本選手権のショートプログラムでジャンプの着氷が乱れるなどして)
「『これぐらいでいい』と思えるほど自分は天才じゃない」(2021年12月、全日本選手権で優勝し北京五輪代表に決定。前回の平昌五輪後に「燃え尽き」て調子を落としたが、再び躍進したきっかけを問われ)
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2022年2月、21歳で迎えた北京五輪では見事、有言実行で銅メダルを獲得。直後の2022年3月にあった世界選手権で初優勝し、その年から3連覇も果たしました。世界選手権3連覇は56年ぶりの偉業でした。その間も彼女の「自分との闘い」は続きます。
「ほとんどの試合は練習よりうまくいかないことが多い。試合で100%を出すには、練習で120%の演技ができなければいけない」(2022年10月、スケートアメリカで優勝し、海外開催のグランプリで初めて頂点に立って)
「頭の中で天使と悪魔が戦っている。頑張らないと、という気持ちと、頑張り疲れたという気持ち。何とか悪魔をやっつけたい」(2022年11月、NHK杯で2位となりグランプリファイナル進出を決めるも、ジャンプミスなど本領を発揮できなかったことを受け)
「ライバルは過去の自分。自分に打ち勝てたのが、すごくうれしかった」(2023年12月、グランプリファイナルで初優勝。五輪を除くシニアの主要国際大会を全制覇して)
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坂本選手にとって、乗り越えるべきは常に「自分自身」であり、敵はリンクの中にいない。その信念はミラノ・コルティナ五輪で、他国の選手にも拍手を送り、ハグや笑顔でたたえる姿勢に体現されていました。リンクを照らす太陽のような姿は、華麗な演技や獲得した銀メダルに引けを取らぬほど、各国の人たちに鮮やかな記憶を残しました。
「『銀』で悔しいと思えるのは『金』を目指して頑張ってきた証拠。成長の一つなのかな」
拭っても拭っても流れ落ちる涙。坂本選手が、頑張ってきた過去の自分をねぎらった瞬間でした。
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(まいどなニュース・神戸新聞)
























