タオルでくるくる巻かれ、薄焼きパンで具材を包んだメキシコ料理「ブリトー」のようになった猫。その愛らしくシュールな姿がXで話題を呼んでいます。このおくるみ、実は動物の治療で使われる技術なのだそうです。
投稿したのは、カナダの現役獣医師で、VTuberとしても活動する「しっぽShippo@獣医vtuberさん(@InumataShippo)」。治療やケアのストレスを減らす「猫ブリトー」について聞きました。
■なぜタオルで包むの?猫の負担を減らす「保定」の技術
「cat burrito(キャット・ブリトー)」と呼ばれるこの方法。タオルなどで猫の体を包んで動きを抑え、治療中に動かないよう支える「保定(ほてい)」という技術の一種です。
「注射の針が関係してくると動いてしまう子がいます。前脚でパンチをしてきたり、逃げようとしたり。そんなときにこのブリトーを使うと、かみつきや引っかきのリスクを大きく下げられます」としっぽさん。一番よく使うのは採血のとき。耳掃除や目薬、飲み薬のほか、少し工夫は要りますが爪切りや皮下点滴にも使えるそうです。
背景にあるのは、2016年にアメリカの獣医師が立ち上げた「フィアーフリー(fear free=恐怖や不安、ストレスを減らす取り組み)」という教育プログラムです。言葉が通じない病院でペットが感じる恐怖を減らし、QOL(生活の質)や動物福祉を守ることを目指します。「病院を好きになれなくても、できるだけ恐怖や不安、ストレスを取り除いてあげたい。飼い主と動物病院の両方が力を合わせてできることです」としっぽさんは話します。
■動画のお手本は、病院で暮らす“病院猫”
タオルの巻き方は、別の日に投稿された動画で紹介されています。お手本を見せてくれたのは、しっぽさんの勤務先で暮らす「病院猫」。ある事情で安楽死を頼まれましたが、しっぽさんがそれを断って保護した猫です。当時は膀胱炎だけだった若い猫でしたが、のちに慢性腎臓病になりました。毎日の飲み薬と定期的な皮下点滴が欠かせません。
「一見おとなしそうですが、針が関わる採血や点滴は苦手。だからこそ猫ブリトーに慣れてもらい、できるだけリラックスして治療を受けられるようにしています」。採血のときだけは、事前に落ち着く薬も使います。
■家庭で試すときのコツと、守ってほしいルール
家庭での爪切りや目薬にも使えますが、先に守ってほしいルールがあります。「本気で嫌がる子には無理やりしないでください」
パニックになった猫は思いがけない力で暴れ、飼い主や医療スタッフ、猫自身がけがをすることがあります。恐怖がトラウマになり、次から攻撃性が強まる場合も。高齢の猫や循環器に持病がある猫では、強いストレスが命に関わりかねません。難しいときは無理をせず、かかりつけの獣医師に相談してほしいと呼びかけます。
まず猫を伏せの姿勢に。前脚をしっかりタオルで包み込みます(パンチを防ぐため)。首元は、前脚が出たり顔が自由に動いたりしないよう、ややきつめに巻くのがポイントです。最後にお尻と後ろ脚もタオルに入れ込み、キックを防ぎます。
「そこまで嫌がらないけれど、ちょっと難しいなって子は、落ち着いた環境でトレーニングすれば慣れる子が多いです。練習のときは、ご褒美を忘れずに」
投稿には「大人しく包まれてからの最後の『みゃおー』とっても可愛いです」「これ知ってたら自宅輸液(自宅での皮下点滴)楽だっただろうな。そもそもおとなしく包まれてくれたらだけど」と多くのコメントが寄せられています。巻き方を動画で紹介した投稿は、421万回以上表示されました。
しっぽさんは、YouTubeなどで「ペットと過ごすよりよい未来のために」と発信を続けています。
「すべての猫に合うとは言えませんが、こういう安全な保定の仕方があると知っておくだけでも損はありません。北米の動物福祉の考え方を共有できて本当によかったです」と語ってくれました。
(まいどなニュース特約・山岡 もと子)























