長く放置していた車のエンジンを掛ける場合や、あまり車に頻繁に乗らないためガソリンの給油頻度が少ない(数年に一度の給油)場合、「ガソリンタンクに入っている燃料は腐っていないか?」「ガソリンが劣化していてエンジンを掛けない方が良いのでは?」といった疑問を持つ人も多いのではないでしょうか。
そんな心配にお答えするために、現役の整備士がその見分け方や注意点などについて解説します。
■ガソリンは劣化する?
ガソリンには添加剤などが含まれており、劣化対策はある程度されていますが、およそ6カ月程度を目安に使い切ることが推奨されています。
ただ実際には、車に乗る頻度が少なく、半年ではタンク内のガソリンを使いきれない人も少なくありません。
ちなみにわたし自身は、15年以上の整備業務においてガソリンの劣化に起因する不具合には巡り合ったことがありません。
劣化したガソリンを使用することは車にとって良いことではありませんが、数年程度であればエンジンの始動や走行に支障をきたすことは実際には考えにくいです(可能性は0ではありません)。
■ガソリンが劣化した際の症状
劣化したガソリンを使ってしまったときに発生する症状をガソリンそのものの変化と、車に起きる症状に分けて解説します。
▽劣化したガソリンの状態
劣化したガソリンは「臭い」「色」「粘度」の状態が、正常なガソリンと比べて変化します。
【異臭がする】
劣化が進んだガソリンは「酸っぱい臭い」「甘い臭い」など、ひとによって感じる特徴は異なるものの、正常なガソリンと比べて明らかに異なる臭い(刺激臭)がします。
【変色する】
劣化が進んだガソリンは変色します。元々ガソリンは透明感のある薄いオレンジ色に着色されていますが、劣化するとどんどん茶褐色に近付いていき、かなりの年数を経過したものになると黒ずんだ色になります。
【粘度が出てくる】
通常のガソリンはサラサラした液体ですが、劣化したガソリンは揮発せずに残った成分によって粘度が上がり、ドロドロになります。
▽ガソリンが劣化した時に車に起きる症状
劣化したガソリンを使うと、エンジンが正常に動かないことがあります。そのときに発生する症状を解説します。
【エンジンが掛からない】
エンジンが健康に稼働するためには以下の3つの要素が必要です。
・良い混合気
・良い圧縮
・良い火花
混合気はガソリンと空気が混ざり合った気体を指します。劣化したガソリンを含んだ混合気により、この3つの条件を満たすことができなくなったエンジンは、掛けようとしても掛からないケースがあります。
【エンジン不調の発生】
エンジンが始動しても、劣化したガソリンが原因でエンジン不調となる可能性があります。エンジン不調の症状として「アイドリングが安定しない」、「加速が悪い」、「エンストする」などがあげられます。
【燃費の悪化】
一見、問題なくエンジンも掛かり走行もできるような場合でも、劣化したガソリンを使うことで発生するパワー不足などによって、結果的に燃費が悪化することもあります。
■劣化したガソリンの見分け方
劣化したガソリンを見分けるには、先ほど解説した「臭い」「色」「粘度」をチェックします。しかし、色と粘度はガソリンタンク内部のガソリンを目視できないため、通常は確認することが困難です。
中にはガソリンタンクそのものに、ドレン(排出口)のある車もありますが、ガソリンは通常の温度下だと、静電気の発生などでも容易に引火してしまう恐れがあるので、専門の知識がない場合はタンクからガソリンを抜く行為は非常に危険なため、決しておこなわないでください。
一方で臭いの違いは、給油口のキャップを開けて嗅いでみれば分かるでしょう。
■ガソリン継ぎ足し時の注意点
数年単位で運転しなかった車や、古い車を購入したり譲り受けたとき、ガソリンが劣化して腐っていないか心配です。そんなとき、とりあえず新しいガソリンを継ぎ足そうと考えるかもしれませんが、その注意点やどう対処するべきかを解説します。
▽ガソリンの継ぎ足しはしない
新しいガソリンを継ぎ足しすれば、古い劣化したガソリンが希釈されて対処できるのではと考えるでしょうが、ガソリンの継ぎ足しは適切な対応ではありません。
余計なトラブルが発生しないよう、基本的に劣化したガソリンがガソリンタンクに残っている場合には、できる限り全量を抜き取ってから新しいガソリンを給油することが好ましいです。
▽困ったときは車屋さんに相談を
ガソリンを全量抜き取ることは簡単なことではなく、危険も伴います。
また、携行缶にガソリンを給油したい場合、法律により自分で行うことは禁止されており、トラブル防止のために携行缶への給油を一切禁止しているガソリンスタンドもあります(給油できるところでは、必ずガソリンスタンドの従業員がおこないます)。
場合によっては古い車だとガソリンタンクそのものも劣化、錆の発生などで交換の必要があるケースもあります。
ガソリンが劣化して腐ってしまっていることが考えられるときは、車屋さん(整備工場)に問い合わせ、必要に応じて積載車で引き取りに来てもらい、整備工場でプロの整備士に対処してもらうことをおすすめします。
■整備士のまとめ
ガソリンは必ず劣化します。乗る機会が少なくても、2年ごとにきちんと車検を受けているような使用環境であれば、よほどのことがない限りはガソリンの劣化による不具合に見舞われることはありません。
一方で何年もの間、野晒しで放置されているような車だとガソリンが劣化して腐ってしまっていることも考えられます。
給油口のキャップを開けて臭いを嗅いでみて、通常とは異なるガソリンの臭い(刺激臭)がする場合には、無理にガソリンを抜こうとしたりエンジンを掛けたりせずに最寄りの整備工場に相談し、場合によっては積載車で取りに来てもらい、プロの整備士に点検・対応してもらうことも検討しましょう。
(まいどなニュース/norico)























