このお金は借りたものなのに… ※画像はイメージです(hikigaeru/photoAC)
このお金は借りたものなのに… ※画像はイメージです(hikigaeru/photoAC)

マイホームを購入するため、親から頭金として1000万円を銀行口座に振り込んでもらった40代の会社員Aさん。親子間ということもあり、借用書(金銭消費貸借契約書)は作成しませんでした。

「出世払いで、余裕ができたら少しずつ返してくれればいいよ」という親の言葉を真に受け、具体的な返済計画も立てないまま2年が経過しました。そんなある日、Aさんのもとに税務署から「住宅取得資金に関するお尋ね」という文書が届きます。

慌てて税理士に相談したところ、「返済期日も金利も決まっておらず、返済実績もないなら、これは借金ではなく『贈与』とみなされます。約170万円の贈与税がかかります」と衝撃の事実を告げられてしまったのです。

親からお金を「借りた」だけのつもりが、なぜ贈与と判定されてしまうのでしょうか。正木税理士事務所の正木由紀さんに話を聞きました。

■口座振込の記録だけでは不十分!

ー親子間の借金が税務署に「贈与」とみなされる基準は何ですか?

税務署は「返済の実現可能性」や「契約の形式」をみて総合的に判断します。親子間であっても、契約書(金銭消費貸借契約書)が存在しない場合や、返済期日・金利が定められていない場合は借金と認められにくくなります。

また、口座振込などによる定期的な「返済実績」がない場合も、実質的にあげたりもらったりした「贈与」と判断され、贈与税の課税対象となってしまいます。

ー「あるとき払いの催促なし」という口約束が認められない理由は?

税務上、「出世払い」や「余裕ができたときでいい」といった口約束は、返済時期が不確定で返済義務が実質的にないものとみなされるためです。

返済の期限や催促がない貸し借りは、いつでも踏み倒せる状態であり、実質的に「お金をプレゼントした」ことと変わらないと判断されます。いくら当人同士が借金だと主張しても、客観的な証拠がなければ税務署には通用しません。

ー贈与とみなされた場合、どんな税金やペナルティがかかりますか?

1000万円を無申告で受け取っていた場合、本来の贈与税に加え、ペナルティとして「無申告加算税」や「延滞税」が科されます。もし悪質と判断されれば、最高40%の重加算税が課されるリスクもあります。

税務署からの指摘を受ける前に自発的に修正申告をおこなえばペナルティは軽減されますが、本来払う必要のなかった多額の税金を負担することになります。

ー親からの借金を正当な「借金」と認めてもらうための対策は?

親からお金を借りる際は、必ず「金銭消費貸借契約書」を紙で作成し、妥当な返済期日や金利、返済方法を明確に記載してください。さらに、返済の証拠を残すために現金手渡しではなく「銀行口座からの振込」で定期的に返済をおこなうことが必須です。

あらかじめ契約書を作成し、月々数万円でも返済実績を積み重ねておくことで、税務調査が入った際にも正当な借金であることを証明できます。

◆正木由紀(まさき・ゆき) 税理士
10年以上の税理士事務所勤務を経て令和5年1月に独立。これまで数多くの法人・個人の税務を担当。現在は、社労士や司法書士ともチームを組み、「クライアントの生活をより充実したものに」をモットーに活動している。私生活では2児の母として子育てに奮闘中。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)