災害社会学が専門の東北大学助教、定池祐季(ゆき)さんはほぼ毎週、北海道の厚真(あつま)町へ通っている。同町は昨年9月の北海道胆振(いぶり)東部地震で震度7を観測し、36人が亡くなった。
「現地で道庁の職員に会ったことがない。被災地を支える姿勢に乏しい。あのときとは大違い」
「あのとき」とは、1993年の北海道南西沖地震だ。
定池さんは当時中学2年生。最大の被災地となった奥尻島に住んでいた。家族と高台に逃げて無事だったが、津波で町は一変し、知人が犠牲になった。
この経験が災害研究に飛び込むきっかけとなった。人と防災未来センター(神戸市)で研究員を務めたこともある。
奥尻の素早い復興に道が果たした役割は大きい。「奥尻の一大事は北海道の一大事という危機感から手厚い支援態勢を取った」と定池さん。だが、胆振東部地震にはまるで人ごとのような冷淡さを感じるという。
なぜなのか。定池さんは「行政トップの姿勢も一つの要因だと思う。残念ながら災害対応への熱意が伝わってこない」と手厳しい。
「平成の大合併」や公務員の減少で、市町村の災害対応力は低下している。大規模災害が多発する中、都道府県の支援態勢が復興の鍵になるだろう。知事のリーダーシップが問われているともいえる。
そして何より、役所の人手不足について国民的な議論を始める必要を感じる。
ここ20年余りで地方公務員は17%も減少した。既に土木系の職員がいない自治体も少なくない。公務員の削減が社会にとって危険なレベルになっていないか、冷静に見つめ直すときではないだろうか。
