日々小論

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 経営者が自社製品への政府の規制について、緩和ではなく強化を求めるのを初めて聞いた。対話型人工知能(AI)「チャットGPT」を開発した米新興企業の最高経営責任者、サム・アルトマン氏だ。

 4月に来日して岸田文雄首相と面会し、チャットGPT活用の際の規律や国際的なルール作りの必要性を指摘した。日本が先進7カ国(G7)首脳会議議長国である点は当然、意識しているはずで、5月の広島G7サミットでは、各国で協議する場を設けることが首脳声明に盛り込まれた。

 その後もアルトマン氏は、米上院の公聴会で規制導入を呼びかけ、AI開発を免許制にすることを求めた。感染症や核戦争と同様に、AIが人類絶滅をもたらすリスクを考えるべきだとする米非営利団体の共同声明にも、著名な研究者らとともに署名した。

 こうした言動を、どう評価すればいいのだろう。

 自社製品の問題点を率直に認め、社会全体に啓蒙しようとする新しいタイプの経営者か。人類絶滅のリスクをはらむ製品を生みながら、対策は政府任せの悪役か。

 米グーグルやアマゾンなどの世界的なIT大手に対しては、市場を独占したとして各国が規制強化の動きを見せる。先手を打って規制強化を求め、経営へのダメージを小さくしようとした、とは考えすぎか。

 スマートフォンやツイッターが犯罪や社会の分断を助長するとは、開発者は思わなかったはず。先端技術が想定通りに普及し、進化するとは限らない。

 アルトマン氏の本心が何であれ、チャットGPTの利点を増やし悪影響を抑える方策は社会全体で考えるしかなさそうだ。

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