日々小論

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 3年余り苦しめられた新型コロナウイルス。政府は今月、感染症法上の分類を5類に引き下げた。マスクやアクリル板に別れを告げ、平時のありがたみをかみしめた人も多いだろう。

 だが平時に戻っていない場所がある。政治記者にとって大事な取材現場である首相官邸だ。コロナ禍前、官邸会見室の記者席は約130あったが、2020年4月から感染対策で29席に減らされた。首相会見には内閣記者会の常勤幹事社19社から各1人と、地方紙や外国プレス、フリー記者から抽選で10人しか参加できなくなった。

 この間、兵庫県には緊急事態宣言が4回出されたが、首相の声を直接聞く機会は限られた。全国紙や通信社の記者はいるが、地方固有の課題があり、独自にただして読者に届けたい言葉がある。阪神・淡路大震災級の災害が起きても会見に入れない恐れもあった。制限撤廃の申し入れは顧みられなかった。

 5類移行後も期待は裏切られた。席数こそ48席に緩和されたものの人数制限は続き、官房長官会見も43席に増やされたものの上限はある。岸田文雄首相は「平時の日本を取り戻す」と言ったのに、制限を続けるのは道理が通らない。質問機会を減らし、報道を制御したい官邸の思惑が透けて見える。

 一方、先進7カ国首脳会議(G7広島サミット)に訪れたバイデン米大統領の会見は登録すれば参加できた。なぜ、日本の首相会見は抽選なのか。

 近年、言論の周辺が狭められていると感じる。世論を二分した安倍晋三元首相の国葬会場の取材も、感染対策や警備を理由に大半の地方紙は排除された。取材制限が続けば、市民に届く情報が細る。元の状態に戻すべく、ここが踏ん張りどころだ。

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