日々小論

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 「私たちは今、『無理ゲー』の中にいます」

 作家の雨宮処凛(かりん)さんは、そんな言い方をした。

 「日本が貧しくなっていく中で、みんな自己責任で死ぬまで競争に勝ち抜かないと、野垂れ死にする。他者に思いをはせる余裕すらない」。それが日本の「失われた30年」の弊害だと。

 3年前に起きた神戸市西区の精神科病院「神出病院」の虐待事件の連載を始める。看護師ら27人が集団で患者を虐待していた。看護師らは動機を「ストレス発散のため」と話し、「患者を人として見られなくなっていた」と口をそろえた。

 日本は長年、障害者を社会から切り離してきた。特に重度の知的障害者は1960年代から「患者狩り」と称し、山中の病院に隔離された。

 国連は昨年秋、精神科病院の強制入院を廃止するよう日本政府に勧告した。同時に、障害児を分離して育てる特別支援教育の中止も求めた。

 子どもの数は減っているのに、特別支援学校の生徒数だけは毎年過去最多を更新している。文部科学省は個別に支援ができるため、「保護者のニーズが高い」と必要性を強調する。しかし世界の潮流でもある、障害の有無にかかわらず共に学ぶ「インクルーシブ教育」とは、明らかに逆行している。

 7年前、相模原市の知的障害者施設で入所者19人が殺害される事件が起きた。「責任の一端は学校教育にある」と受け止めた小学教諭らがいた。「障害の有無や学力で『分ける』ことが差別の芽を生んだのでは」

 三十数年前の小学生時代を思い出す。足の不自由な子も、勉強の遅い子もいた。「障害児」なんて言葉は知らなかった。みんな、友達だった。

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