日々小論

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 ウシオ電機創業者で元経済同友会代表幹事の牛尾治朗さんが亡くなった。晩年、2度、インタビューした。市場主義、構造改革で鳴らし、政権との距離も近い。強面(こわもて)の財界人という印象だったが、姫路、神戸の思い出を愛惜の表情で語ってくれた。

 祖父、父ともに姫路商工会議所会頭を務め、舞子の洋館に暮らした。親戚の作家阿部知二さんから「君は恵まれた足場に立っている。伝統の蓄積を生かして見識あるリーダーになれ」と諭された。尊敬したのが川崎製鉄(現JFEスチール)初代社長西山弥太郎さんだ。千葉、水島に製鉄所を建設し、高度成長の扉を開いた。「(葺合の本社を)訪ねると工場の横の簡素なところ。メーカーは本社に金をかけるべきではない、工場設備にという思想でした」

 グローバル、オープン、インディペンデント(自主独立)。肩書で評価せず人間を見る。これが神戸の風土だと強調した。バブル崩壊後の1990年代不況の際、牛尾さんが出した「市場主義宣言」もそんな進取の精神が源流にあったと感じる。

 政府の保護と業界協調が優先されてはグローバル競争に勝ち抜けない。しかし行き過ぎた市場主義、規制緩和の弊害も顕在化し、日本は長期停滞に沈む。「市場を重視すれば成功するという単純な話ではなく、優秀な人は市場を通じて残り、市場の争いに勝てなかったら消えていく。シュンペーターが革新の重要性を説いた創造的破壊だ」

 巨大企業を看板にした財界人ではなく、苦闘してウシオ電機を育て上げた気骨。「時代がどんなに変化しても創造力を養って新しいものの中にチャンスがあることを信じるか信じないか、それが今後の鍵になる」。言葉の数々を思い返している。

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