日々小論

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 「商売の世界では、まず2番手を目指すんです」

 取材先でそう聞いたことがある。取引の中心を担う最大手に対し、業界2位は代替先として、また取引上の比較相手として需要があるという。

 そこで3位以下はまず2番を狙う。2番になると、1位を目指してさらに技術や価格を磨く。一方、最大手は追い越されまいとしのぎを削る。そうやって健全な競争は生まれるという。

 では、元は競争状態になかった市場に競争を持ち込んだらどうなるか。大手電力会社の不祥事に絡み、市場環境を構築する難しさをあらためて感じる。

 電力販売を巡るカルテルや、新電力会社の顧客情報の不正閲覧が明るみに出た。大手の幹部同士は「不可侵」の約束を交わしたとされ、現場は閲覧情報の一部を営業活動に使っていた。

 2016年の電力小売り全面自由化が一因という。大手は地域独占の特権を奪われ、新電力などの攻勢を受けた。顧客維持のため、自由化が期待した「公正な競争」は阻害された。関西電力の森望社長は、カルテルを巡る大手同士の関係を「競争相手というより、同じ課題を抱えた仲間との認識」と表現した。

 普通、不祥事が続けば顧客は離れる。だが新電力はエネルギー価格の高騰にあえぎ、競争する余力もままならない。「本当は切り替えたいんだけど」と、中小企業の経営者は嘆く。いくら探しても、関電より料金の安い新電力はないという。競争原理が働かない中、関電は23年度、過去最高業績を見込む。

 不正閲覧に絡み大手は業務改善計画を提出した。再出発を迫られる大手、突き上げることもできない新電力各社。到底、公正な競争は望めそうにない。そのツケは利用者に回ってくる。

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