兵庫にもゆかりの深い劇作家の平田オリザさんがインタビューで語っていた。
パワハラやセクハラはがん細胞みたいなもので、ちゃんと治療しないと組織全体が冒される。うちの劇団ではパワハラで辞めてもらった人もいる-。
だいたいこんな内容だった。ハラスメントは組織を弱体化させるという指摘が胸にすとんと落ちた。
さて、パワハラの定義をめぐって企業と働く側の話し合いが紛糾している。
企業にパワハラ防止を義務付ける法律が来年6月に施行される。それを前に、厚生労働省がパワハラの判断例を労働政策審議会に示したところ、労働者側が猛反発しているのだ。
例えば「意に沿わない労働者を長時間、別室に隔離したり自宅研修させたりする」はアウト。「経営上の理由で一時的に能力に見合わない簡易な業務に就かせる」はセーフ、つまりパワハラではないとしている。
「経営上の理由」「一時的」の文言は拡大解釈の余地が大きい。働く側の一人として、パワハラ防止には、被害者がどう感じたか、という主観への配慮も必要だと思う。
複数の県内企業幹部(全員男性)が異口同音に言っていた。「パワハラが指摘される社員は有能で仕事熱心だったりする。人材に限りはあるし、穏便な処分で済ませたい…」
パワハラやセクハラが当たり前だった時代を、自分も生きてきた。若い世代から見ると、認識が甘い部分もあるだろう。でも、もうさすがに「有能なパワハラ社員」なんてあり得ない。
ハラスメントをする社員と、それに甘い顔をする幹部。双方がじわりと組織の力をそいでいく。ああ、恐ろしい。
