淡路島なるとオレンジのピールを使ったさわやかな香りとほんのりとした苦み、日本酒のこうじを使った飲み応えがある味－。そんなクラフトビールを大阪から兵庫県南あわじ市に移住した男性が売り出そうとしている。醸造所は、景勝地の慶野松原海岸近くの空いていた瓦倉庫。夢だったビール造りへ、「人生をかけた挑戦。地元の人に愛される淡路島ならではのビールを」と力が入る。

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　大阪市出身の河野充晃さん（３５）。大学で農学を学び、食品加工会社へ。ビール製造への興味から、「業界を知ろう」と大阪府内の酒造会社に転職した。

　日本酒、焼酎、クラフトビールなどあらゆる酒類の製造を担い、ノウハウを身に付けた。会社の方針は「食事に合う酒」だったが、「いろんな種類のビールを自分で造りたい」との思いが強まった。

　２０２１年春ごろから挑戦の場所を探した。農業が盛んで、都市部へのアクセスがいい立地を重視した。神戸市垂水区を経て、南あわじへ。瓦製造業者から、空いていた倉庫を借りることになった。

　先月、酒造会社を退職し、家族と移住。醸造所「ＮＡＭＩ　ＮＯ　ＯＴＯ　ＢＲＥＷＩＮＧ（なみのおとブルーイング）」を設けた。今月末に醸造タンクなどの製造機器を搬入予定で、来春の販売開始を目指している。

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　数種類のレシピを考案済みだ。このうち、日本酒のこうじは島内の酒造会社から、淡路島なるとオレンジはミカン農園から仕入れる。

　販路の開拓も進めている。島内外の約３０カ所に売り込んだ。前職の人脈を生かした島外のクラフトビール専門飲食店や、島内の道の駅やホテルなど。「島に通い始めて知り合った人経由で、いろんな施設にあいさつに行った」と話す。

　初期費用が予定より５００万円近く膨らんだ。材料費が高騰し、円安で輸入する醸造機器が値上がりした。クラウドファンディング（ＣＦ）で資金を募ると、目標額１５０万円に対して約１７０万円集まった。「多くの人の期待をかみしめた」。瓦倉庫の醸造所では直売もする予定で、「南あわじで初めてのクラフトビールになる。ビール愛好家が集う拠点にしたい」と思い描く。（西竹唯太朗）

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