ドローンや高性能農機具をはじめとしたスマート農業技術を持つ企業と産地をマッチングする兵庫県のウェブサイト「わく・わく!ひょうご!」が、農業者の課題解決に一役買っている。2022年11月の開設以来、18件のマッチングが成立。2件で技術が導入され、そのほかでも導入に向けた協議や実証実験などが進んでおり、県の担当者は「サイトを通じてスマート農業が認知されてきた」としている。(三宅晃貴)
■苗の間引きにアシストスーツ、肥料散布にドローン
産地側は、果樹園の省力栽培技術の確立や夏場の草刈りの自動化など抱える課題を、地域の農業普及指導員を通して申請し、これまでに22件の課題が登録。企業側は、解決できる技術や使用するスマート農機などを示す。登録企業は大手農機メーカーを含む県内外の63社で、スマート農機はドローンやリモコン草刈り機、農地の水管理システムなど81件に上る。
そのままマッチングするケースもあるが、多くはスマート農業に詳しい民間のコーディネーターが、費用対効果や技術の適性など農業経営の視点も踏まえて仲介する。産地と企業をつなぐマッチングは22年度に3件、23年度に10件、24年度は5件。それぞれ導入に向けた協議や実験などに取り組む。
技術導入に至ったのは2件。中腰で行う苗の間引き作業の負担軽減を求めた淡路市の花き農家は、姿勢を支えるアシストスーツを導入し「体への負担が軽くなった」と話しているという。
ドローンの導入を検討する吉川町営農組合協議会(三木市)は「実際に機能を見て検討したい」とサイトに登録。構成する集落営農組織での共同利用に向け、先進地視察や複数の候補企業との会議などを経て1社とマッチングした。
今月上旬には、出穂前の水田に肥料をまく実証実験を行った。企業の担当者がドローンを操り、田1枚を数分で完了するなど作業時間を大幅に短縮。電線を避ける飛行も披露され、組合員らは「導入を前向きに考えたい」と協議を続ける。
南あわじ市の農業者はタマネギの農薬散布にロボット農機の活用を模索。マッチングした企業を招いた自律自走型ロボットの実演会を開くなど具体化に向けた検討を進めている。
県総合農政課は「技術を使えば、猛暑での作業負荷の軽減や農産物の品質向上につながる。具体的に検討することで、資金など解決すべき課題もはっきりする」と指摘。コーディネーターを務める洲本市の農業コンサルタント会社「農社」の奥野竜平社長は「技術を持つ企業側も兵庫に集まる好循環が生まれている」としている。