地球温暖化による稲作への影響が強まる中、「これからもずっとおいしい日本酒を」との思いでつながる7農家、7蔵元、神戸新聞社の連携による統一ブランド「環(めぐる)」の夏限定生酒などを神戸市内の料理店で味わうキャンペーンが開催されている。
呑(の)むと地域の資源が回り出す。地球環境への負担を減らす。もちろん、おいしい!-などのフレーズとともに、「環」のプロジェクトは2021年から福寿、盛典、富久錦、播州一献の4銘柄でスタート。23年から大関、白鷺の城が加わり、今年から櫻正宗が参加して7銘柄となった。神戸市内の料理店10数店舗で、一般の酒販店で手に入らない夏限定生酒などが8月末まで味わえる。各店なくなり次第終了する。
環の原料となる兵庫県特産の酒米山田錦は、現在5農家が栽培している。農業は地球の気候変動の影響を受ける一方、農薬や化学肥料利用、機械化に伴う化石燃料の大量消費と、温室効果ガスを発生させる家畜ふん尿や野菜ごみなどの大量廃棄から温暖化の大きな要因と指摘されている。
こうした状況を受けて、環プロジェクトに参加する酒米農家は、輸入の天然ガスと石油で作られる化学肥料から、食と農のごみ由来の「消化液」を中心とした地肥料へと転換し、無農薬や減農薬で山田錦を栽培する。水田の生き物を増やして、柔らかくて栄養が豊富な土づくりに成功し、稲作にかかるエネルギー消費をほぼ半減する脱炭素農法を確立する農家も出てきたほか、夏秋の高温環境に負けない栽培技術でも成果が上がっている。
一方、消化液を供給する弓削牧場(神戸市北区)では、ふん尿やチーズの残さを発酵させる中で消化液と同時に得られる自然エネルギー「バイオガス」の給湯利用を進め、レストランなど牧場内で消費するガス燃料の半分を自給している。
世界で日本酒の人気が高まり、サステナブル(持続可能な)な日本酒が求められる中、地域の資源と経済を循環させながら農業の脱炭素を進める新しいものづくりの取り組みが注目されており、農家や酒蔵と交流する食と農のツアーも秋に計画されている。(辻本一好)
■「環」の夏限定生酒が味わえる料理店
一夜一夜(三宮 078・325・1818)、ink BOOKS & COFFEE(神戸大正門前近く ※金土開店)、喜楽亭う~ちゃん(元町 090・9114・1558)、玄斎(県庁前 078・221・8851)、しんど(三宮 078・252・3917)、せいごろりん(北野 078・261・2595)、珠のれん(神戸駅 078・341・0327)、手打ちそば処 卓(元町 078・351・7981)、なん天(県庁前 078・331・6665)、ひの(三宮 078・333・7751)、ひょうご五国ワールド神戸三宮横丁(三宮 050・3159・5713)、ホテル北野プラザ六甲荘(北野 078・241・9150)、まるわ(元町 078・333・5339)
■「環」プロジェクト参加メンバー
<銘柄(酒蔵)>
播州一献(山陽盃酒造=宍粟市)、白鷺の城(田中酒造場=姫路市)、富久錦(富久錦=加西市)、盛典(岡田本家=加古川市)、福寿(神戸酒心館=神戸市東灘区)、櫻正宗(櫻正宗=神戸市東灘区)、大関(大関=西宮市)
<消化液供給者>
弓削牧場(神戸市北区)、箸荷牧場(兵庫県多可町)
<山田錦生産者>
豊倉町営農組合(加西市)、ten(加西市)、玄米家(加東市)、ツクダ酒店(西脇市)、 中大沢集落改善組合(神戸市北区)
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