アニメ「機動戦士ガンダム」のキャラクターデザイナー、アニメーションディレクターで、漫画家としても活躍する作家の回顧展「描(えが)く人、安彦良和」(神戸新聞社など主催)が、神戸市中央区の兵庫県立美術館で開かれている。半世紀を超える安彦さんのキャリアはガンダムがヒットした後、専業漫画家の長い時期を経て、アニメ業界に復帰するという異例の経緯をたどる。来館した安彦さんに創作活動を振り返ってもらい、専業漫画家に転身した際の思いについて聞いた。(石崎勝伸)
■「本気を出して作ると、ここまでいくか」
-ガンダムがヒットした後、自身は1980年代末にアニメからいったん手を引くが、思うところがあったのか。
「80年代はアニメ業界にとって大きな時代。世代交代が一気に進んだ。待ちに待っていたが、波として思っていた以上に大きかった。先輩には失礼な言い方になるが、業界全体が一種のマンネリ化というか、硬直化していた時代が長かった。それがもどかしくて、未熟でもいいから若い人たちとやりたいと」
「ただ、自分は若い人たちの先頭に立ってリードできるんだという思い上がりがあった。思った以上に元気で若い人たちがどっと出てくると、置いていかれるというか、そっちに行ってしまうのかこの波は、と」