宍粟三尺を栽培する大砂正則さん。左の大きくて黄色いキュウリは種取りのために成熟させたもの=宍粟市内
宍粟三尺を栽培する大砂正則さん。左の大きくて黄色いキュウリは種取りのために成熟させたもの=宍粟市内

 葉とつるが頭上まで茂るキュウリ畑のトンネルを進むと、とびきり長い黄色の実が横たわっていた。名前の通り、3尺(約90センチ)近くある「宍粟三尺」だ。「それは種取り用に熟させています」。生産者の大砂正則さんが色や形を確かめながら、40センチほどに育った実を出荷用に収穫していく。自然と人が織りなすテロワールの物語が詰まった兵庫。今回は酒かす漬けにして独特の食感と風味を楽しむ「宍粟三尺きゅうり」を取り上げたい。(辻本一好)

■大和三尺からの派生

 大和三尺(奈良)、毛馬胡瓜(きゅうり)(大阪)、笠置三尺(京都)など、関西には漬物に利用されてきたキュウリがある。江戸、明治時代に中国などから伝わり各地に根付いたとみられる伝統野菜で、宍粟三尺もその一つだ。