山梨日日新聞の記者たちは法廷で見聞きしたことを詳細にノートにメモした
山梨日日新聞の記者たちは法廷で見聞きしたことを詳細にノートにメモした

 傍聴席に座るまで、かなりの時間を要した。2023年10月25日に甲府地裁で開かれた、夫婦殺人放火事件の初公判。ハンカチ1枚まで広げて金属探知機をかける職員の姿に、「厳戒態勢」という言葉がよぎる。

 入廷した遠藤裕喜被告=事件当時(19)=は、落ち着きがなかった。山梨日日新聞(山日(さんにち))の甲府署キャップ、松本飛勇馬(ひゅうま)(27)は「意外と小柄で、気の弱そうな子だな」と驚いた。「事件の凶悪性を見ると、もう少しがっちりしていそうなイメージだった」

 三上潤裁判長が開廷を告げる。名前を聞かれた被告は何も言わない。質問を重ねられても無言。無為な時間が流れ、裁判長は「被告人に間違いないという前提で手続きを進める」と収めた。