東日本大震災で津波による甚大な被害を受けた東北の沿岸部を中心に、被災前の町並みを縮尺500分の1の模型で復元する取り組みが広まっている。自然豊かな風景だけでなく、「イナゴをとった」「タイムカプセルを埋めた」などと書かれた旗を立て、住民らの思い出も記録。発生直後から活動を続ける神戸大大学院教授の槻橋(つきはし)修さん(55)=建築学=は「模型にして『町を悼む』ことが次の町をつくっていく土台になる」と語る。(名倉あかり)
■住民に聞き取り、思い出も記録
2009年まで仙台市の大学に勤めていた槻橋さん。11年3月の震災発生で、「何か動かなければ」との思いに駆られた。建築の経験を生かして何ができるか-。学生らと話し合い、被害の大きかった沿岸部の模型作りを始めた。
ただ、航空写真や住宅地図を参考に町を再現しようとしても、建物の変化など分からないことがたくさんあった。「現地に行って、地元の人に直接聞いたほうが早い」。宮城県気仙沼市の白い模型を作ると、11年6月、同市へ向かった。