「こんな日が来るなんて」。息子、孫と一緒に「御巣鷹の尾根」の登山を予定する小沢紀美さん=大阪府豊中市
「こんな日が来るなんて」。息子、孫と一緒に「御巣鷹の尾根」の登山を予定する小沢紀美さん=大阪府豊中市

 1985年8月に起きた日航ジャンボ機墜落事故で亡くなった小沢孝之さん=当時(29)=の妻、息子、2歳の孫が、初めて3世代で現場となった群馬県上野村の「御巣鷹の尾根」に登る。事故当時は妊娠中だった妻紀美さん(67)=大阪府豊中市。約5カ月後に出産し、幼い息子をおんぶして、何度も慰霊登山をした。時は流れ、息子の秀明さん(芦屋市)は38歳の父親に。登山道が山開きする29日、皆で一緒に孝之さんの名前が刻まれた墓標を目指す。(中島摩子)

 包装機器メーカーで働き、休日はバレーボールに汗を流していた孝之さんは、約39年前、日帰り出張で事故に巻き込まれた。紀美さんの妊娠が分かると、あちこちに報告の電話をして喜んでいた夫。子どもが生まれたら-と、家族3人の未来像を膨らませていた。

 そこに起きた事故。「時間が止まり色もにおいも感情さえもない暗闇」と表現するほどの絶望の一方で、妊娠4カ月のおなかの中には、日々育っていく命があった。「1人で育てる」と覚悟を決め、出産した。