神戸新聞連載「里へ 人と自然のものがたり」が新聞協会賞を受賞し、表彰を受ける小林良多記者=16日午前、秋田市千秋明徳町(撮影・中西幸大)
神戸新聞連載「里へ 人と自然のものがたり」が新聞協会賞を受賞し、表彰を受ける小林良多記者=16日午前、秋田市千秋明徳町(撮影・中西幸大)

 日本新聞協会主催の第77回新聞大会が16日、秋田市のあきた芸術劇場ミルハスで開かれ、新聞、通信、放送各社の代表者ら約400人が参加した。交流サイト(SNS)で飛び交う偽情報や誤情報が元日の能登半島地震の際にも拡散したことに触れ「人々の命や暮らしを守るのは時間と労力をかけた取材に基づく確かな報道」とする大会決議を採択。2024年度の新聞協会賞の授賞式があり、神戸新聞社の連載企画「里へ 人と自然のものがたり」など6件が表彰された。

 開催地の秋田魁新報社の佐川博之社長は「デジタル空間に情報があふれる中、世の中に必要とされる新聞は何か。気付きを得てもらいたい」とあいさつ。日本新聞協会の中村史郎会長(朝日新聞社社長)は生成人工知能(AI)技術による報道コンテンツの無断利用の問題などについて指摘した。

 神戸新聞社による新聞協会賞の受賞は23年度の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」に続き2年連続6度目。「里へ-」は写真連載企画として、22年4月から24年3月まで掲載した。人と自然界の関係の変化をテーマに、野生動物や人の営みにレンズを向けた。ドローンやウエアラブルカメラなどの機器も活用して生き物たちの姿に迫り、23年10月には民家の裏庭に現れたツキノワグマを自動撮影カメラで捉えることに成功した。

 授賞式で、取材班代表の小林良多記者は全国でも課題となっている野生動物の市街地出没に触れ、「生き物との適切な距離を取り戻せるか。問われているのは私たち人間だ」と述べた。(鈴木雅之)

 その他の新聞協会賞の受賞は次の通り。

 自民党派閥の裏金問題をめぐる一連のスクープと関連報道(朝日新聞社)▽福祉事業会社「恵」の不正に関するスクープと、一連の報道(中日新聞社)▽能登半島地震「珠洲市街地に押し寄せる津波、輪島朝市通り炎上」のスクープ写真(北國新聞社)▽OSINTと3D表現技術による新たなデジタル報道手法の開拓(日本経済新聞社)▽京都アニメーション放火殺人事件連載企画「理由」と公判報道(京都新聞社)

連載企画「里へ」特集 人と自然、揺らぐ境界 カメラで捉えた野生動植物の生態

連載企画「里へ」特集 レンズを通して見た自然 多様な環境を育む「適度な人の手」