警察車両で送致される立花孝志容疑者(左)=10日午前9時41分、神戸市中央区下山手通5
警察車両で送致される立花孝志容疑者(左)=10日午前9時41分、神戸市中央区下山手通5

 兵庫県の告発文書問題に絡み、1月に死去した竹内英明元県議=当時(50)=をデマで中傷したとして、兵庫県警捜査2課は9日、名誉毀損(きそん)の疑いで、政治団体「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志容疑者(58)=東京都港区=を逮捕した。同課は立花容疑者が「情報源」とした人物らの捜査を重ねた結果、情報そのものに真実と信じるだけの根拠がなかったと判断。関係者と口裏を合わせ、証拠隠滅を図る恐れがあるとみて逮捕に踏み切った。

 同課は認否を明かしていないが、捜査関係者によると、逮捕後に「発言したことは間違いない」と供述しており、発言自体については争わない姿勢を示している。立花容疑者は10日午前、送検された。

 立花容疑者の逮捕容疑は、竹内氏について昨年12月13~14日の街頭演説で「警察の取り調べを受けているのは多分間違いない」などと発言、今年1月19~20日には交流サイト(SNS)や応援演説で「明日逮捕される予定だった」などと虚偽情報を発信し、名誉を傷つけた疑い。

 これらの発言については、1月20日に当時の県警本部長が「事実無根」と否定し、虚偽と判明している。

 だが立花容疑者は逮捕前、記者会見やSNSで「違法性が阻却されるだけの根拠をもって発言した」と主張。真実と信じるに足りる相当な理由(真実相当性)があり、罪にはならないと述べていた。

 同課は立花容疑者に任意で事情聴取。捜査関係者によると、立花容疑者が情報提供元として挙げた関係者らにも事情を聴いてきた。その結果、立花容疑者の発言には確実な根拠がなく、真実相当性もないと結論付けた。

 関係者の説明が容疑を裏付ける証拠になるため、過去の経緯など「具体的な事実関係」を踏まえ、立花容疑者が関係者に働きかけて口裏を合わせる恐れがあると判断した。こうした事情が逮捕の主な理由という。

 一連の捜査は、警察庁の判断も仰ぎ、神戸地検とも協議。最高検の意向も踏まえて進めていた。

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 立花容疑者は昨年11月の兵庫県知事選で、自身の当選を目指さず斎藤元彦知事を応援する2馬力選挙を展開した。翌月には地元の大阪府泉大津市で市長選に出馬。今年3月の千葉県知事選、6月の三木市長選にも立ち、いずれも落選した。7月の参院選兵庫選挙区では「斎藤知事を応援する人は立花孝志に投票してほしい」と訴えたが落選。学歴を巡る問題で市長が失職した静岡県伊東市の市長選(12月7日告示、14日投開票)にも出馬の意向を示していた。

 立花容疑者はNHK受信契約に関する個人情報を不正に取得し、ネット上に流出させるとNHKに迫ったとする威力業務妨害罪などで懲役2年6月、執行猶予4年の有罪判決が2023年に確定している。

【名誉毀損(きそん)罪】刑法230条で、不特定または多数の人に向けて公然と事実を示し人の名誉を傷つけた場合、内容が真実か虚偽かどうかにかかわらず処罰すると規定される。ただし公務員らに関する事実については、公共性や公益性があるとみなされ、真実だと証明された場合や、真実だと信じる相当な根拠に基づいていれば、処罰されない。県議もこれに含まれる。