２０２２年２月現在、全国には１１９４の道の駅がありますが、そのうち宿泊施設があるのは８６駅。その一つが、兵庫・但馬にもありました。北近畿豊岡自動車道・八鹿氷ノ山インターチェンジ（ＩＣ）から７分、国道９号沿いにある道の駅「但馬楽座」（兵庫県養父市上野）です。

　宿泊施設は１８室あり、１０畳の和室が１５室、洋室のシングルルームが３室。シングルといいながら広いセミダブルベッドで、２名での利用も可能です。天然温泉があるので、基本は部屋に風呂はありませんが、身体に障がいのある方や、高齢で温泉の利用が困難という方には、風呂付きの特別室もあります。都会に出られた地元の方が盆や正月に帰省して、おじいちゃんやおばあちゃんと孫たちが過ごすために利用されることも多いそうです。３世代で泊まれるなんてワクワクしますね。ただ、今は人数制限があったりもするので必ず予約時にご確認ください。

　日帰り温泉は入浴料５００円。ＪＡＦカードの提示で５０円引きとなります。回数券は１３枚つづりで５千円とお得。お風呂セットを持参している方が多く、地元の皆さんに愛されているのがわかります。長靴用の靴箱がたくさんあるのもこの地域ならでは。

　私たちもよく利用しますが、ここの温泉は髪の毛がサラサラになるので、風呂上りはシャンプーのＣＭよろしく髪を何度もかき上げてしまいます。新しい建物ではありませんが、細かい所までよく行き届いたとてもくつろげる空間です。

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　しゃれたスーツで迎えてくれたのは、駅長の三田文雄さん（７４）。どんな高級スーツかと思いきや、「ユニクロ」のセール品と聞いて親近感。山形県酒田市のご出身で、生まれが但馬以外の駅長さんは今回が初です。

　その半生はドラマ化してほしいほど波瀾万丈（はらんばんじょう）。幼い頃、両親が離婚して苦労されたそうですが、その都度すばらしいアイデアと行動力で乗り越えてきたそうです。高校卒業後、上京してヤマザキパンの工場に就職。どんどん出世し周囲からも将来を嘱望されていましたが、接客に興味があり転職。その後、大小数々の宿泊施設を渡り歩き、経営困難のホテル再生をいくつも成功させています。その腕を見込まれて、ここを立て直すため養父市にやってきました。そしてわずか２年で黒字経営に転換！　どんなウルトラＣを繰り出したのでしょう？

　三田さんは、お客さまが何を望んでいるか、どうすれば満足いただけるか、従業員たちとしっかりコミュニケーションを図り、迎える側の作法を徹底的に引き上げました。さらに味にこだわり、コックさんと試作を重ね、レストランも改装。

　お手頃価格からぜいたくメニューまで但馬牛を使用したさまざまな料理を楽しめるようにしました。目玉メニューの「但馬牛炙（あぶ）りとろ卵丼」は温泉卵とたっぷりのローストビーフの下にグリル野菜を隠し、みそ汁とおしんこ付きで１１００円です。

　「これからの道の駅は、地元の人たちが有効に利用できるような施設に変えていかないといけない」と、常に物事の本質を見極めブレない三田さん。例えば、外出が困難な高齢者の代わりに買い物をしたり、オンラインで医者と患者をつなげられるような場を作ったりするなど、「道の駅を拠点に地域の人たちが助け合っていければ、町はどんどん活性化する」と強調します。

　構想を思い描き、「働く人にはやりがいを、施設を利用する高齢者の方には生きる目標を持ってもらいたい。行政と協力して取り組んでいきたい」と、力強く語ってくださいました。

　世の中が大きな転換期を迎えている今、これからの道の駅がどう変わっていくのか興味深いです。

　但馬楽座ＴＥＬ０７９・６６４・１０００

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俳優・河合美智子さんが取材・執筆し、但馬各地の「道の駅」を深掘りしていきます。

【連載一覧】
（１）道の駅「フレッシュあさご」　絶品！岩津ねぎ料理
（２）道の駅「神鍋高原」　ご当地サーモン、深い味わい
（３）道の駅「村岡ファームガーデン」　手軽な値段で但馬牛堪能
（４）道の駅「但馬のまほろば」　お土産が豊富　新鮮野菜も
（６）道の駅「浜坂の郷」　「浜坂地えび」に感激、地元食材の料理が充実