増え続ける医療費をどう抑制するかは喫緊の課題だ。一方で、医療資機材や人件費の高騰で深刻な経営難に陥る医療機関は多く、公定価格に当たる「診療報酬」の引き上げも避けられない。医療費の大幅削減を掲げる日本維新の会との連立で、高市早苗政権は極めて難しいかじ取りを迫られる。持続可能な医療制度へ、知恵を絞らねばならない。
維新は7月の参院選で医療費を年間4兆円削減し、1人当たりの公的医療保険料を年6万円引き下げると主張した。自民党は医療費拡大を抑えつつ従来の体制を維持する方針だったが、連立政権合意書では維新の要求を受け「医療費を削減し、保険料引き下げを目指す」と明記した。
削減策の目玉の一つは、市販薬と成分や効能が似る「OTC類似薬」を保険適用から外す案だ。軽症患者の薬代を全額自己負担にすることで医療費は減らせるが、がんなどの患者を救済する高額療養費制度を維持する財源にも当て込まれ、保険料引き下げにつながるかは不透明だ。
常用する薬が保険の適用外になれば、長期にわたって投薬が必要な慢性疾患の人にとって負担増は切実だ。必要な治療を控えることがないよう、きめ細かい救済策を講じる必要がある。
自民と維新は病院や診療所の病床を全国で11万床削減する方針で合意しているが、人口比に当てはめて減らすだけでは医療の偏在がいっそう進みかねない。削減の目標達成ありきではなく、実情をきめ細かく把握し地域医療の逼迫(ひっぱく)を招かない病床配分が求められる。
高齢者の負担増も焦点になる。
維新は全ての年齢層の窓口負担を原則3割に引き上げる方針を掲げ、合意書も3割負担の拡大をうたう。
支払い能力が高い人に応分の負担を求める方針は理にかなっている。しかし、低収入で持病のある人まで機械的に引き上げるのは乱暴に過ぎる。世代間の対立をあおる形で現役世代の負担減をアピールするのはやめるべきだ。
高齢者人口がピークを迎える2040年ごろに向け、根本的な制度見直しも避けられない。
かかりつけ医が患者の健康全般を管理し、必要があればすぐさま高度医療を担う病院につなぐ機能の強化が重要だ。救急や産科など採算を取りにくい診療科に重点を置くなどメリハリをつけた支援が欠かせない。
かかりつけ医の制度化は、自民の有力な支持団体である日本医師会の強い反対で検討が進まなかった。連立組み替えを機に政府は関係団体と危機意識の共有を図り、中長期的な改革に向け踏み込んだ議論をするべき時期に来ている。
























