高市早苗首相は衆院解散に当たり「国論を二分するような大胆な政策に挑戦するために、国民の信任が必要だ」と強調した。その一つに挙げたのが安全保障政策の抜本強化である。
昨年10月の所信表明演説で安保政策の基本方針となる「国家安全保障戦略」など安保関連3文書の改定を年内に進める考えを示した。自民党と日本維新の会はこれを衆院選公約に盛り込み、防衛装備品の輸出を非戦闘目的に限る「5類型」を撤廃するとも記した。
武器輸出が大幅解禁され、国是として堅持してきた「非核三原則」が見直される可能性がある。日本が築いてきた平和国家像を大きく変容させる政策転換となる。国論を二分したまま、推し進めていい問題ではない。
だが首相は、選挙戦では多くを語ろうとしない。安保体制の強化に必要な防衛費の規模や財源については自民の公約には明記しなかった。同盟国に国内総生産(GDP)比5%への引き上げを求めるトランプ米政権への対応も明確にしていない。これで有権者に信を問う判断材料を十分示したと言えるのか。
高市政権の「アクセル役」をアピールする維新は、米軍の原子力潜水艦の共有や、インテリジェンス機能強化のためスパイ防止法の制定も掲げた。
国民民主党は防衛装備品の販路拡大に取り組むとし、安保政策で与党と重なる部分が多い。前政権まで長く「ブレーキ役」だった公明党が連立を離れ、選挙結果によっては、憲法に基づく「専守防衛」を逸脱する防衛力増強論が加速しかねない。
立憲民主党と公明が合流した中道改革連合は、専守防衛の範囲内で日米同盟を基軸に抑止力を強化するとした。非核三原則は堅持し、核共有論には反対して高市政権と対峙(たいじ)する。
一方、存立危機事態での集団的自衛権の行使を容認する安保関連法を公約で「合憲」と認めた。立民が主張してきた「違憲部分の廃止」を撤回したことで従来の支持者やリベラル層の動揺を招いている。これで専守防衛の形骸化に歯止めをかけられるのか。明確な説明が必要だ。
国のかたちを左右する選挙である。有権者も緊張感を持って投票に臨まねばならない。























