飛鳥時代の宮殿跡や古墳、寺院跡などで構成する奈良県明日香村、橿原市、桜井市の遺跡群「飛鳥・藤原の宮都(きゅうと)」を世界文化遺産に登録するよう、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の諮問機関・国際記念物遺跡会議(イコモス)が勧告した。7月に韓国で開かれるユネスコ世界遺産委員会で正式に決定する。国内の世界遺産は1993年登録の姫路城をはじめ文化遺産21、自然遺産5で、飛鳥・藤原は27件目となる。
対象は、中大兄皇子らが蘇我入鹿(そがのいるか)を謀殺する「乙巳(いっし)の変」の舞台となった飛鳥宮跡(きゅうせき)、本格的都城・藤原京の中心だった藤原宮跡など、6世紀末~8世紀初頭の19遺跡だ。中央集権体制の誕生・成立過程を示し、中国や朝鮮半島との緊密な交流を伝える。極めて貴重な遺産である。
遺跡群が2007年にユネスコの暫定リストに記載されてから、20年近くになる。世界史上の価値を説明するために自治体や関係者が腐心してきたという。苦労がようやく実り、登録が実現するのは喜ばしい。これを機に、飛鳥・藤原の魅力に国内外から注目が集まり、地域の活性化につながることも期待したい。
19の古代遺跡には二つの宮殿跡のほか、高松塚古墳やキトラ古墳、石舞台古墳、天武・持統天皇陵、飛鳥寺跡、橘寺跡、飛鳥水落遺跡、酒船石遺跡など著名なものが並ぶ。
発掘は藤原宮跡で1934年に始まった。72年に高松塚古墳で極彩色の人物群像などの壁画が発見され、古代史ブームが起きた。83年からの調査でキトラ古墳でも四神図などの壁画が確認された。考古学、歴史学などによる長年の研究蓄積があってこその世界遺産登録だと言える。
飛鳥・藤原の遺跡が点在する地域には美しい集落と農地、丘陵が広がり、世界遺産にふさわしい。明日香村では地元の声を受け、歴史的風土の保存と生活向上の両立を図る特別措置法「明日香法」が80年に施行された。行政と住民が協力し、景観を維持してきた努力には頭が下がる。
イコモスは勧告で、修復のために取り出された高松塚古墳、キトラ古墳の壁画について、将来的に古墳内に戻す取り組みの継続を求めた。高松塚の壁画は2004年にカビによる劣化が明らかになった。石室は解体され、壁画修復には10年以上を要した。教訓を踏まえ、古代遺跡のあるべき姿を模索する必要がある。
未発掘部分が多い藤原宮跡など、各遺跡の全体像解明も課題となる。国民に遺産の価値を伝える工夫や、訪問客増加への対応策なども欠かせない。研究を深めるとともに、それぞれの保全に万全を期さねばならない。国は従来以上に文化財行政と地元の支援に力を入れてほしい。
























