改正個人情報保護法が成立した。現行法の規制を緩和し、病歴や犯罪歴などの「要配慮個人情報」を、本人の同意なしに事業者が収集できるようになる。人工知能(AI)の開発や統計作成といった用途に限った特例とし、大規模なデータ取得を容易にするのが狙いだ。だが、個人を識別しない形で適切に利用されるか担保できないとの専門家の指摘もあり、権利侵害への不安や懸念が残る。
規制緩和は経済界が強く要望してきた。AI開発には大規模なデータ収集が不可欠で、情報提供に関する個々の同意取得が壁になっているためだ。松本尚デジタル相は「(収集が)滞れば、わが国のAI開発、利活用に非常に大きな障害が生じる」と改正の意義を強調した。
だが改正法では、要配慮個人情報も、匿名や仮名に加工されない実データのまま提供され得る。事業者は国の許認可を必要とせず、本人には提供の事実を直接知らされない。もし悪意ある事業者を介して情報が流出すれば、詐欺などの犯罪グループの手に渡る恐れすらある。
また、人種や信条といった情報をAIが分析し、個人の行動や傾向を予測する「プロファイリング」に利用される可能性もある。企業の採用や金融機関の融資などで不当な差別に結びつく懸念も拭えない。
AI技術の発展がもたらす恩恵は大きいが、個人の権利保護という土台の上に成り立つべきだ。政府がAI開発に前のめりになるあまり、個人の権利やプライバシーが犠牲にされるようなことがあってはならない。
改正法には、千人分を超える大規模な個人情報を不正に取得した事業者に、利益相当額の納付を命じる課徴金制度を新設した。一方、個人に代わり、消費者団体が個人情報利用の差し止めなどを求める団体訴訟制度は見送られた。不正の歯止めとして、十分とは言えない。
立憲民主党、公明党などは情報の仮名化や匿名化を求める修正案を提出したが、政府は応じなかった。公布後2年以内の施行に向け、政府は具体的な運用方針を個人情報保護委員会のガイドラインなどで定める。権利保護について国民が納得できる制度を設計する必要がある。
























