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 2011年の東京電力福島第1原発事故後、福島県などから兵庫県などに避難した79世帯221人が、国と東電に計約29億円の損害賠償を求めた原発賠償関西訴訟で、大阪地裁は東電に対して原告約100人に計約9千万円の支払いを命じる判決を言い渡した。一方、事故を防ぐ義務を怠ったとは言えないとして、国への請求は棄却した。史上最悪レベルの事故に関し、原発への規制権限を持つ国の責任を認めない判断は理解に苦しむ。最高裁の判断に倣っただけの判決との批判は免れまい。

 原告らは13年から順次提訴した。事故で拡散した放射線に被ばくするか、避難するかを強制的に選ばされたとし、人権侵害を主張した。法廷では「避難は苦肉の策であり、原発被害そのもの」などと訴え、避難に伴う経済的な負担や家族が別れて暮らす苦痛への賠償を求めた。

 一般人の年間被ばく限度は自然放射線を除いて1ミリシーベルトと定められている。ところが事故後、福島県内では20ミリシーベルトに引き上げられた。原告らが不安を抱いたのは無理もない。

 事故は東日本大震災の地震と津波で、第1原発が全電源を喪失したために起きた。この裁判の最大の争点は、国が東電に津波対策を命じていれば事故が防げたかどうかだった。大阪地裁は、国の規制により東電が対策をしていても事故が発生した可能性は相当にあったと述べた。国の賠償責任を否定した22年の最高裁判決と同様の論旨である。

 だが最高裁が統一判断を示した4訴訟のうち3件では、高裁が国の責任を認めていた。21年の東京高裁判決は、政府の地震調査研究推進本部(地震本部)が出していた地震予測「長期評価」に基づき、国が対策を命じていれば「津波の影響は相当程度軽減され、全電源喪失には至らなかった」と国の法的責任を認めた。

 地震本部は研究者らで構成し、文部科学相が本部長を務める。東京高裁などの判決は、科学的にも社会常識的にも納得できる内容だ。

 それに対して、最高裁は長期評価の信頼性を明確に判断せず、対策で事故は回避できなかったと結論付けた。その結果、東電にのみ賠償を命じる判決が続いてきた。最高裁判決の影響はあまりに大きく、避難者の救済を阻んでいると言うほかない。

 原発事故から15年以上が経過しても、福島県から県外に避難している人は1万9千人を超える(昨年11月時点)。原発避難者訴訟は全国で約30件提訴され、原告数は約1万人に及ぶ。法的な責任の有無にかかわらず、これだけの住民が事故被害に苦しむ現状を国が放置してよいはずがない。国は避難者の暮らしを支える救済拡大に踏み出すべきだ。