中部電力が再稼働を目指してきた浜岡原発3、4号機(静岡県御前崎市)の審査を巡る耐震データ不正問題で、同社は外部の弁護士による調査委員会の報告書を公表した。調査委は不正の要因について、再稼働のスケジュール遅れに関する経営陣からの叱責(しっせき)が現場への圧力となった点などを挙げた。これを受け、林欣吾社長と勝野哲会長、水野明久相談役が辞任を表明した。再稼働審査の申請も取り下げるとした。
経営陣の姿勢が不正につながったと認定された以上、引責辞任は当然だ。中部電は安全を最優先とする組織風土を醸成できるよう、抜本的な改革に取り組まねばならない。
不正があったのは、原発の耐震設計に関わる「基準地震動」のデータだった。想定地震の最も大きな揺れを示す重要な値で、再稼働を審査する原子力規制委員会に示した。
報告書は225通りの地震動評価のうち、少なくとも208通りで不正が確認されたとした。20の地震波から最も平均に近い波を「代表波」にすると規制委に説明していたにもかかわらず、実際は恣意(しい)的に代表波を選び、つじつま合わせで残りの19波を後付けしていた。あまりにも悪質な虚偽説明と隠蔽(いんぺい)工作である。
不正の背景として、早期の再稼働へ圧力がかかる中、「社内に独自の正当化理論があった」と報告書は分析した。「自分たちは正しいことをしている」と考え、確信や信念を持って不適切な行為をした担当者もいたという。倫理意識の欠如と、再稼働を正義とするおごりを感じる。
問題を指摘する2度の内部通報が適切に処理されなかった事実も、法令順守を軽視する体質を物語る。原発には何よりも安全性の確保が求められる。経営陣から現場までの意識が変わらない限り、原子力事業者の資格はないと言わざるを得ない。
驚いたのは、林社長が「再申請を目指す」と述べたことだ。浜岡原発ではデータ不正だけでなく、安全対策工事の精算手続きや1、2号機の廃炉費用請求で不祥事が相次ぐ。再稼働に言及するのは早計だ。
再申請にこだわるのは、3~5号機が動けば1年間で約2500億円の収支改善効果が見込まれるためだろう。だが、再稼働ありきの姿勢では問題の再発防止は望めまい。中部電は再稼働の断念も視野に入れ、経営戦略を見直すべきではないか。
政府は2040年度の電源構成に占める原発の割合を2割程度と見込む。既存33基の大半を動かすのが前提だが、現状は15基にとどまる。浜岡原発の再稼働が難しければ、目標はさらに遠のく。政府は再生可能エネルギーなど、原発以外の脱炭素電源の拡大に注力する必要がある。























