保護時、生後1.5カ月ほどだったルシウスくん(画像提供:だぬ彦さん)
保護時、生後1.5カ月ほどだったルシウスくん(画像提供:だぬ彦さん)

玄関の外に設けられた、風や雪を遮るための小さな空間「風除室」の前を、小さな猫がうろうろしていました。

2014年6月20日、午後2時過ぎのことです。そのとき、生後1.5カ月ほどと思われる男の子の子猫が、飼い主のXユーザー・だぬ彦さん(@ofukunenelucius)のもとに姿を見せました。

どこから来たのかはわかりませんが、控えめに玄関まわりを行き来する様子に、だぬ彦さんは迷わず動物病院へ連れて行くことを決めたといいます。

この出会いがルシウスくん--現在11歳になる保護猫との、新しい日々のはじまりでした。

■突然現れたひとりぼっちの子猫

2014年6月20日の午後、風除室の前に現れた子猫は、逃げる様子もなく落ち着いていたそうです。玄関の外にある風よけの空間にそっと入れてみても、嫌がることはありませんでした。

「保護当日は猫風邪を引いていたこともあり、わりとおとなしかったです。でも、食欲は旺盛でした」

ルシウスくんはその日のうちに動物病院へ。治療を受けながら、しばらく家で様子を見ることになりました。保護から約3週間後の7月11日には、正式に家族として迎え入れられます。

当時すでに、家には2匹の先住猫がいました。ルシウスくんは臆することなく近づいていったそうです。その積極性に、先住猫たちはやや圧倒された様子だったといいます。

「怒られる場面もありましたが、付かず離れずの関係でうまくやっていたようです。ケンカになることもなかったので、先住猫からの“しつけ”として見守っていました」

やがて、お互いのペースを理解するようになり、自然な距離感での生活が始まりました。

■育児と猫育てが重なった、かけがえのない時間

ルシウスくんを迎えた2014年、飼い主さんのご家庭ではもうひとつ大きな出来事が起こっていました。長男が誕生したのです。

「人間の育児をしながら、先住猫と新たな幼猫をお世話することは、とても貴重な体験でした。猫育てによって、育児のストレスが少し軽減されていたような気もします」

手のかかる日々の中でも、猫たちの存在は穏やかさを運んでくれました。

「子育てと猫育てが両立できたのは、我が子も猫たちも、みんな健やかでいてくれたおかげ。この境遇にはとても感謝しています」

■マイペースでおっとり だけど甘えん坊になった今

ルシウスくんは、とても穏やかで物静か、どこか“自分のペースを乱さない”芯のあるタイプなのだとか。先住猫たちがいたころは、それぞれの動きに合わせて自然体で過ごしていたといいます。

「人が外から帰ってきても、先住猫たちは起きて出迎えてくれていましたが、ルシウスは寝ていればそのまま寝ていました」

そんなルシウスくんにも、変化のときが訪れました。先住猫たちが虹の橋を渡ったのです。

すると、ルシウスくんは、飼い主さんにすり寄ってくることが増えました。

「今ではかなり甘えん坊になったと思います。一匹になって、やっぱり寂しくなったのかもしれませんね」

先住猫たちはみな女の子で、家の中では唯一の男の子になったルシウスくん。“末っ子長男”として家族に寄り添っています。

「我が家の中を明るくしてくれる存在です」

(まいどなニュース特約・梨木 香奈)