突然告げられた流産… ※画像はイメージです(taka/stock.adobe.com)
突然告げられた流産… ※画像はイメージです(taka/stock.adobe.com)

30代のAさん夫婦は長年子どもを望んでいましたが、なかなか恵まれませんでした。不妊治療を経てAさんの妻は待望の妊娠します。やっと妊娠できたことに夫婦で喜びを感じていましたが、ある日妻から出血があったと連絡が。ふたりで病院を受診すると、流産をしていることがわかりました。

Aさんはよくあることとは知っていたものの、まさか妻がなるとは思わず放心状態です。医師から手術の説明を受けるものの、まったく頭に入りません。さらに妻も相当落ち込んでいるようで、Aさんはどう声をかければよいのか分からないでいます。身体のことなので大事にしてほしいと思いますが、夫としてどのようにサポートしたらよいのでしょうか。勝どきウィメンズクリニックの院長である松葉悠子さんに話を聞きました。

■流産が起こる確率は約15%

ーそもそも、どういう状態を流産というのでしょうか

22週未満で赤ちゃんが亡くなっている状態を流産と言います。流産でも状態によって種類がいろいろあり、10週未満で亡くなる稽留流産が多いです。稽留流産は、出血などの症状がなく、順調に育っていると思って診察を受けたら、亡くなっていることがわかるというケースが多くなっています。

ー流産はどれくらいの確率で起きるのでしょうか

流産の確率は約15%とされていますが、 年齢が上がるとともに上昇し、40歳以降になると30%以上が流産するとも言われています。精子は生涯作られ続けますが、卵子はそうではありません。卵子は胎児期に卵母細胞が作られた後、減数分裂の途中で卵子の形成が止まり、排卵の直前に減数分裂が再開して成熟します。加齢とともに卵子の質も下がっていくため、流産する確率も高くなっていきます。

ー流産しやすい人の特徴はあるのでしょうか

基本的に流産は受精卵の問題です。着床した時点で、運命が決まってしまっています。そのため事前に着床前診断を実施した不妊治療をしていない限り、防ぎようがありません。しかし2回以上流産を繰り返すような方は不育症といわれ、抗リン脂質抗体症候群などの病気や染色体異常など、何らかの流産しやすい体質があるかもしれません。2回以上流産を繰り返している場合は不育症検査がすすめられますが、1回流産したからといって次もそうなるとは限りません。

ー流産の後、どのような症状があるのでしょうか

流産した後の症状は人によって異なります。つわりが軽くなる人もいますが、「つわりがなくなって流産かもしれない」と受診しても、実際には赤ちゃんは元気だったというケースも。ですが、なかには流産後も赤ちゃんがお腹にいる限り辛いというケースもあります。稽留流産の場合は、まったく症状がないこともあります。

また、流産が起こる週数によっても異なります。週数が経つほど、子宮も大きくなっていくため、出血量が増えたり、お腹の痛みが強くなったりします。特にお産の経験がない方は、強い痛みが出ることもあり心理的にも非常に辛い思いをされる方もいます。

ー流産した後、周りはどうサポートしたらよいでしょうか

人によって受け取り方や捉え方も異なります。切り替えができる方は、手術の翌日から仕事に行ける方もいますし、反対にその妊娠に思いを留め、何カ月も自宅でゆっくり過ごされる方もいます。どちらがいい悪いではなく、寄り添うことが大切です。

流産は、患者さんにとって重みのある経験です。社会復帰までに時間がかかるようであっても「それぐらい辛かったんだよね」と認めてあげる、共感してあげることが大事だと思います。

とはいえ、悲観する必要はまったくありませんし、無理に「次へ次へ」と進もうとする必要もありません。

流産は、最初から運命が決まっている防ぎようのないものです。「こうすべきだった」「〇〇に気をつけるべき」「次はこうしよう」などと考えても解決できないことも多いです。「あなたのせいではない」と伝え、自然体で過ごすことが大切です。

◆松葉悠子(まつば・ゆうこ) 勝どきウィメンズクリニック院長
金沢大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、日立製作所 日立総合病院、東京都保健医療公社 豊島病院、恩賜財団母子愛育会 愛育病院などに勤務し、勝どきウィメンズクリニックを開業。2024年には晴海ウィメンズクリニックも開業し、理事長に就任。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)