元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖
元セクシー女優のフリーライター・たかなし亜妖

キャバクラやホストクラブ、大人のお店などを題材に取り扱ったドラマや漫画は、キャスト同士の激しいいじめや喧嘩のシーンが描かれがちです。これを見て世間から夜の店=大々的ないじめが横行するというイメージを持たれるのですが、あくまでひと昔前のお話。最近のナイトワーカーはサッパリした人が多く、分かりやすい足の引っ張り合いはほぼありません。みんな自分が売れることに必死で、良くも悪くも周りなんて気にしちゃいないからです(笑)

しかし、表立ったバトルがない代わりに陰湿な蹴落とし方が浸透したのも事実。インターネットの普及やSNSでの売り出しをきっかけに、今までにない新たなドロドロ事件が勃発しています。実際にトラブルに巻き込まれたキャストから話を聞くと、絶対に遭遇したくない内容ばかり。そこには人気商売に従事する人間ならではの“毒”が、たっぷりと含まれていました……。

■自分を「叩く」人間の正体は……おまえかーい!

歓楽街で働き、そこそこ人気が出ると売れっ子特有の悩みが出てくるもの。その中でも深刻なのが、ネットでの誹謗中傷。お店に関する掲示板のスレッドは一店舗に一つ必ず存在するくらいで、場合によっては見るに堪えない酷い内容が書き込まれています。

都心で働くYさんは、“叩き”に悩まされたキャストの1人。掲示板は見ない主義でしたが、空気の読めないお客さんが逐一書き込みの内容を報告するせいで、ついついチェックするクセがついてしまいました。

そんな彼女が苦しむのを見て、優しい言葉をかけてくれたのは同僚のKさんでした。もともと2人はお互いの悩み相談をしたり、営業後に食事へ行くなどとても仲が良かったのです。(以下『』内はYさん談)

『Kちゃんがすごい励ましてくれて、心強かったんですけど……。でも、よくよく考えると彼女にしか話してないようなことが書かれてたりして、疑心暗鬼になりました。まぁ結局、蓋を開けてみたら“ビンゴ”だったからすごくショックで』

案の定、誹謗中傷の犯人は寄り添ってくれたはずのKさんでした。自分のお客さんとグルになり、売れ始めたYさんの足を引っ張ろうと姑息な手段を使ったのです。

『掲示板の内容をわざわざ伝えてくるのもKちゃんのお客さんだったから、その時点で気づくべきでした』

犯行が発覚した時、Yさんはお店のスタッフに相談。2人の関係に亀裂が入ったころ、Kさんはお店を急に退店します。風の噂では他の街で再びキャストとして働いているとか。恐らく元からトラブルメーカー気質を持っているのでしょうが、他店でも同じことをしそうなタイプですね……。

■売り上げを頼り切る、地味な妨害

「最初はアイバン(※)やW指名(※)が多いことに有難いな~って思ったんですけど、よくよく考えたら利用されていただけでした。今思い出してもむかつきます!」と鼻息荒く語るのは、お店のキャスト・Rさんに困らされたAさん。

RさんはAさんの後に入店した妹のような存在。彼女は後輩が指名をもらえるよう気を回し、席に呼ぶなどしてとても可愛がっていました。

ただ、どんなに優しくしても必ず見返りがあるとは限りません。Rさんは優しさに甘えたのかお客さんを掴む努力をせず、Aさんに売り上げを頼るようになってきました。(以下『』内はAさん談)

『アイバンやW指名だと、売り上げって女の子のぶんだけ割れるんですよ。別に独り占めしたいとかはないけれど、彼女の場合は指名卓=私とのアイバンかW指名ばっかり。最初はそれでいいと思ったのですが、段々“自立する気がないんだな”と言うことが分かり、嫌になってきちゃって』

同じ席に着く機会が増え、AさんとRさんは店内で“ニコイチ”と見られるように!後輩の“おんぶにだっこ”の状態を苦しく感じていると、次は最も恐れていた爆弾(※)をされてしまいます!

『いつかやられそうだと危惧していたけど、予想が当たっちゃった(苦笑)お客さんを見事に寝取られ、もう唖然としましたね。まぁルール違反だし、お店としても“彼女が成り立つのは私のお陰”ということを分かっていたので、速攻クビにしてくれましたよ。今はもう安泰だけど、あの時期は結構キツかったなぁ』

恩を仇で返す人間に遭遇し、現在はトラウマで後輩の面倒を見るのをやめてしまったとか。ジワジワと営業妨害をしてくるタイプは第一印象が良いなど、真の姿を隠しながら近づいてくるため、本当に油断なりませんね。

(※)アイバン:合番と書く。1人ではなく複数名での来店の際、それぞれが別キャストを指名すること。席を離さない限りキャストは同じテーブルに着くので「合番を組む」なんて使い方をする。

(※)W指名:1人のお客さんが1名ではなく2名のキャストを同時指名すること。

(※)爆弾:指名客の横取り行為のこと。

どちらも「1番の敵は近くにいる」といったエピソードでしたが、人間関係には本当に気を付けなければなりません。特に仕事上の付き合いだと「労働」というものが間に挟まっているため、フラットな友達関係を築くのがちょっぴり難しいからです。

昼の世界にもドロドロ事情はあれど、夜職の場合は人気商売ですから、足の引っ張り合いが少しばかり特殊。こんな恐ろしい話があちこちで発生するからこそ、メンタルをやられたり、人間不信に陥るナイトワーカーが増えてしまうのです……。

◆たかなし亜妖(たかなし・あや)元セクシー女優のシナリオライター・フリーライター。2016年に女優デビュー後、2018年半ばに引退。ゲーム会社のシナリオ担当をしながらライターとしての修業を積み、のちに独立。現在は企画系ライターとしてあらゆるメディアで活躍中。