還暦のお祝いをしてもらったチャトラン副社長(画像提供:三協精器)
還暦のお祝いをしてもらったチャトラン副社長(画像提供:三協精器)

大阪市東淀川区にある三協精器工業株式会社で副社長を務めるチャトランが還暦を迎え、社員一同から祝福される様子が届いた。茶トラの毛並みに赤いちゃんちゃんこが映え、還暦を迎えたとは思えない美人ネコさんだ。

保護されたときは肋骨が折れていて生命が危ぶまれたが、手当ての甲斐あって回復。社員らの愛情をたっぷり受けて、副社長であり続けている。

■保護されたときは生命の危機も

主にバネを製造している三協精器工業では、普段から社内を保護猫が闊歩している。最初に保護した猫がこのチャトランで、2014年春頃だった。

「肋骨が折れて大けがをした瀕死の子猫がいて、2週間入院させた後に会社で飼い始めました」

そう語るのは、広報担当の濱岡なおみさん。

「獣医さんがおっしゃるには、生後4カ月ぐらいだろうとのことでした」

会社の敷地内に迷い込んでくる野良猫にごはんを与えるほど猫好きの社長・赤松賢介氏は、チャトランが怪我の治療を終えて退院してくると、すぐ副社長に任命して社内で面倒を見ることにした。

それから11年。猫の年齢を人の年齢に置き換えると、今年が還暦にあたるというわけだ。

チャトランの性格はおとなしく、赤いちゃんちゃんこも素直に着てくれたという。濱岡さんと共に広報を担当する三枝さあやさんによると、現在チャトランのほかに12匹いる猫たちは、赤いちゃんちゃんこを見せただけで逃げてしまうそうだ。

今も美貌が衰えないチャトランだが、猫の世話を任されている「猫乳母」こと大西久代さんは「加齢による変化が表れています」という。

「特に感じるのは、毛並みの艶がなくなってきたことです。それと、人間と同じように加齢性のイボが腰のあたりに出ています」

他にも、若いときは半透明で透き通るように綺麗だった爪に、黒ずみが見られるようになってきたそうだ。

「寝ている時間も長くなりましたね。夜は寝ているし、昼間も寝て、時々起きてきて人間によしよししてもらって、また寝ます。1日20時間くらいは寝ていると思います」

「老い」には逆らえないものの、病気はなく健康とのこと。ちなみに、三協精器で暮らしている猫で最高齢は20歳の「ぴっぴ」婆さん。人間の年齢に換算すると96歳くらいに相当する、高齢猫だ。時には普段と違う様子を見せて「もしかして、お迎えが?」と人間たちを心配させるが、翌日には何事もなかったように、また普段通りのんびり暮らしているという。

三協精器では、チャトランを保護した後も、迷い込んできた猫を次々に保護した。専務の「こんぶ」、常務の「ロイ」、常務付秘書の「ネリ」と、役付きの猫をはじめここ最近はチャトランを含め12匹で落ち着いていたが、7月に熊本にあるグループ会社から若手のホープ「豆介(まめすけ)」が新幹線に乗って転勤してきたため、現在は全部で13匹が暮らしている。人間の社員が、毎日交代で面倒をみている。ときには人間の邪魔をすることもあるが、猫が自由に社内を歩き回ることで社内の空気がなごやかになったそうだ。

さて、そんな癒し効果を与えてくれる猫たちがいる三協精器では、バネ製造とは全く畑違いの業種も手掛けている。

北海道にサフォーク種の羊料理専門店を経営し、羊肉を供給するために士別市に羊牧場も独自に運営しているのだ。そして、羊の胎盤から抽出されるプラセンタを配合したオリジナル化粧品を開発し、新ブランド「SOYUL(ソユール)」を立ち上げて事業化した。

その羊牧場にも、ネズミ対策としてガードマンならぬ「ガードニャン」が活躍しているというユニークな会社である。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)