2024年12月に新宿歌舞伎町で撮影されたもの。ランキングをうたった内容だ(C) Google ストリートビュー
2024年12月に新宿歌舞伎町で撮影されたもの。ランキングをうたった内容だ(C) Google ストリートビュー

風営法改正を想定したホストクラブの広告の変化がSNS上で大きな注目を集めている。

きっかけになったのは男子高校生のイワン・コッチャナイロフスキー(@nomenclature810)さんが

「風営法の規制強化を受けてヒンディー語で広告してて草」と紹介したホストクラブの広告。

インド風の宮殿を背景にしたホストの顔写真と「渋谷で"ナマステ"されてない?」という意味不明なキャッチコピーやヒンディー語の文言…。

ホストクラブ業界では今年6月28日に施行された改正風俗営業法の影響で大幅な広告規制が敷かれることに。これまで宣伝の常套句だった「年間売上〇億円」「指名数No.1」といった売上、ランキングに関する数値や営業成績による役職名、煽情的なフレーズが使用できなくなってしまったのだが、やはりこの広告はそれを意識したものなのだろうか。

イワンさんにお話を聞いた。

--この広告をご覧になった際の感想を。

イワン:9月4日午後5時頃、渋谷センター街を歩いている時に見かけてその刺激的なコピーに惹かれて思わず写真を撮りました。最初は意味がよくわからなかったのですが風営法の規制を回避するものかと得心してそのユーモアに痺れました。後に分かったことですが、これは早合点で看板そのものは今年4月には既にあったそうです。結果として風営法の規制を回避した先見の明は評価されるべきだと思います。

ーー風営法改正によるホストクラブの広告規制について考えを。

イワン:医療サービスや健康食品の広告には科学的な根拠が求められ違法か否かの判断が容易に決まるのに対し、ホストクラブの広告は主観に訴えかける性質上、従来の風営法での取り締まりが困難であったことは想像に難くないと思います。各地の条例で違反が摘発されているとはいえ後者の検挙件数は前者の数十分の一でした。

今回の広告規制措置はより厳格な取り締まりに一定以上の効果があったと思いますが、風営法規制を主導するのが警視庁であることは、日本が警察国家としての性格を持つことを象徴していると思います。今年11月のさらなる風営法改正を控え今後の動向を見守っていきたいと思います。

当局が誇大広告を取り締まることは歴史上珍しい現象ではありません。ユーモアでの対抗もありふれたことでしたが、その性格は変化してきているように思われます。戦前の広告規制に対して当時の人々が検閲そのものを皮肉って広告とした事例が散見されますが、検閲が馴染み薄い現代においてユーモアの方向性が外国語での洒落に向いたのは面白いです。

というのもこの広告一つをとっても、異郷の挨拶がネタとして普及するようになった日本のグローバル化及びその知的水準の向上が読み取れるからです。中国の成句に「上有政策 下有対策」とありますが、こうしたいたちごっこが続くのであれば警視庁もまた規制の為に奇想天外な妙手を打つかもしれませんね

ーー投稿に対し大きな反響が寄せられました。

イワン:多くの人がインド文化に興味を持ってくれているようで何よりです。日本の戦略パートナーであるインドが人々の話題にのぼり、モディ政権下でのヒンドゥーナショナリズム、マイノリティの弾圧といった課題に興味を持ってくれる人が増えるのは日本の国益にも叶うと思います。

あと、なぜかホストクラブの関係者と思われ反感を買ったり、インド系の人から気に入られてフォローされるなどなかなか愉快な体験を味わえました。挙句の果てに今回の投稿をネタに「渋谷でナマステ」というAI生成楽曲までできてしまいました。

ホストの方の名前までインド風に解釈して「瀬凪」という名前をサンスクリット語のsena(軍隊)にまで遡っている方もいらっしゃいました。有能なホストが特別な役職を得るホストクラブの仕組みは確かに軍隊の仕組みと符合していると思いました。

◇ ◇

SNSユーザー達から

「ラッシータワーとかしてそう」
「支配人とかがどうしようか真剣に考えて出た結論って経緯含めると余計面白い」
「インドネシアで当局の規制から逃げるために文法的に近いハングル使い始めたって話思い出した」
「外国語ならセーフ理論の雑さが最高」

など数々の驚きの声が寄せられた今回の投稿。読者のみなさんは今回の風営法改正についていかがお考えだろうか。

なおイワンさんは「女力バトル」に焦点を当てた百合漫画「きもちわるいから君がすき」(芳文社)に影響されて古代インドの女性力崇拝思想を学んだそう。兵庫県を舞台に、神戸の名を冠するキャラクターや姫路市の風景などが登場する同作は現在、ニコニコ漫画で6話まで無料公開中。「今回のような発信力ある投稿をできたのも、インド文化と自分を繋いでくれた本作のおかげです。きもすき、きもすぎ~!」と作品への愛を語っていたイワンさんに共鳴する方はぜひチェックしていただきたい。

(まいどなニュース特約・中将 タカノリ)