世界一周旅行といえば誰もが空想しますが、現実の生活を考えると、実現に移することは難しすぎる壮大な計画です。失うものを考えると、二の足を踏むのは当然かもしれません。決断を実行に移し、4人の子どもたちと共に世界を旅した人物がいます。
貯金もほとんどないい状態から家を売却し、全財産を投じて未知の世界へ飛び込んだシングルファーザー ・木村剛士さん(50)に、旅の資金をどう工面し、帰国後の生活をどう再建したのか、リアルな金銭事情について話を聞きました。
ーまずは旅立ちを決めた時点でのお金状況を教えてください
もともと貯金はほとんどありませんでした。自営業だったので、旅の準備が近づくにつれて仕事量をかなり減らしていたんです。旅の資金は、住んでいた家を売却したお金で賄いました。
ただ、売ったお金が丸々旅費になったわけではありません。出発までの3カ月間、一時的にアパートを借りたり、家の不用品を処分したり、旅に必要なものを買い揃えたりして、結局200万円ほどは準備で消えていきましたね。
■かなりのお金を使ったものの後悔はなし!
ー約3カ月間の旅の間、仕事はどうされていたのでしょうか
旅の間、仕事は当然していません。もともとフランチャイズのサービス業をやっていたのですが、収入がないのに毎月のロイヤリティを払い続けるのは厳しいですし、旅に向けてモチベーションも変わってきていたので、出発のタイミングで辞めました。
幸い違約金などはありませんでしたが、手続きの関係で2カ月分ほどのロイヤリティは支払うことになりました。これも家の売却金でどうにかしました。
ー帰国後の住む家や仕事はどうしたのでしょうか
家については、運良く旅に出る前に長野で古民家を見つけ、帰国後はその家をきれいにして、みんなで住んでいます。仕事は、帰国してすぐには始めませんでした。世界を旅する中で自分と向き合いすぎて、むしろ少し自分を責めてしまうような状態になってしまって。
まずは自分を認めてあげる時間が必要だと感じ、2カ月ほどは意図的に働きませんでした。旅の残金100万円もその間の生活費で消えましたが、今はまた自分のペースで、セッションや庭木の剪定などを中心に仕事を再開しています。
ーかなりのお金を使った旅行だったものの、後悔はありませんでしたか
使ったお金以上の価値があったと思っていますし、これからの生活に対する不安もないんです。旅の途中で、例えばカンボジアのように、経済的には豊かでなくてもすごく幸せそうに暮らしている人たちにたくさん出会いました。その経験から、お金と幸せは全く関係ないんだと心から思えるようになったんです。
もともと僕自身もとんでもない貧乏暮らしをしてきたので、最悪そうなってもそれはそれで悪くないなって思っています。本当に追い込まれたら、またやる気を出して新しいことを始めればいい。むしろ、追い込まれる状況も面白いかもしれないとさえ思っています。
◆木村剛士(きむら・たけし)長野で4人の子どもたちと暮らすシングルファーザー 。50歳になり仕事をやめ、家を売り、子どもたちと世界一周の旅へ出る。
(まいどなニュース特約・長澤 芳子)