職場の人間関係の悩みとして「その場の空気を壊したくない」「変に気を遣われたくない」など考えている人は少なくないでしょう。漫画『君の胃袋をかりたい』(作:深蔵さん)の一部としてX(旧Twitter)に投稿されている作品『おじさん課長、大食い社員ををご飯に誘う』には、そんな周りに“気を遣ってばかり”の清和井課長(以下、課長)と部下の大森が、食事を通じて少しずつ心を通わせていく様子を描いています。
舞台はとある会社の昼下がり。部下からランチに誘われた課長ですが、「上司がいたら気を遣うだろう」とひとりで弁当を食べていました。 一方、大森も誘われることなく、会社でカップ麺を食べるようです。ランチに誘われなかったことについて、大森は「自分がいると周囲が気を遣う」と感じており、感情をうまく表現できない自分に悩んでいたのです。
そんな中、大森の豪快な食べっぷりに魅了された課長は、思い切って焼肉食べ放題に一緒にいかないか誘います。
いざ焼肉店に到着した2人。思わず頼みすぎた料理も、大森くんが気持ちよく平らげてくれます。上司と部下だけれど気遣いをしないという約束をしていた2人は食事の時間を楽しみ、課長の心はほっこりと温まり、大森の表情も徐々に柔らかくなっていくのです。
課長は「今まで彼を知ろうとしていなかったのかもしれない」と、今日一日で知れた大森の一面を振り返ります。
でもふと我に返った課長は「オジサンにつき合わせてしまってごめん」と、いつもの自虐癖で謝ってしまいます。 すると大森は「年老いていくことをネガティブなことにしないでください。俺の未来でもありますから。」と返すのでした。
食卓を囲み、すっかり心を通わせた課長と大森は、 「今度は何を食べに行こうか」と語り合いながら帰路につきます。
読者からは「心が温まる」「2人が仲良くなっていく様にほっこりした」など、多くの反響が寄せられています。そんな同作について、作者の深蔵さんに話を聞きました。
■無理してみんなに合わせる必要はない
ー「年老いていくことをネガティブにしないでください」というセリフが印象的でした。
自分自身も、年齢についてつい自虐的に言ってしまうことがあります。自戒を込めて描いたセリフでした。
ー同作品を執筆したきっかけと込めた思いについて教えてください。
きっかけは、同年代の知人と「昔ほどは食べられなくなった」と話をすることが多くなったことです。そこで、オジさんと若者が食を通じて心を通わせる物語を着想し、執筆を始めました。2人とも人間関係で悩んでいる共通点があり、「無理してみんなに合わせる必要はない」という思いを込めて描いています。
ー作品のなかで、特に大切にしている場面はどこでしょうか。
大森くんの表情が徐々に和らぎ、課長と焼肉を食べながら心を開いていく様子が表情に表れているところです。特に21ページ2コマ目の表情は気に入っています。
ー最後に読者へのメッセージをお願いします。
たくさんの反響ありがとうございます!まだまだ課長と大森くんの話は続くので、更新を楽しみにしていただけるとうれしいです!
(海川 まこと/漫画収集家)