車のパンクに関する疑問について現役の整備士が解説 ※画像はイメージです(take mego/stock.adobe.com)
車のパンクに関する疑問について現役の整備士が解説 ※画像はイメージです(take mego/stock.adobe.com)

車のパンクは誰しもに起こりうるトラブルのひとつです。だからこそ万が一のときの対処法や修理時間、修理費用の目安くらいは頭の片隅に入れておきたいですよね。本記事では、車のパンクに関する疑問について現役の整備士がわかりやすく解説します。

■車のパンク修理にかかる費用の目安

車のパンク修理にかかる費用の目安は外面修理の場合で1箇所あたり0円~3000円、内面修理の場合で1箇所あたり3500円~6000円です。

外面修理はJAFや一部保険のロードサービスで対応可能です。さらに、JAF会員や該当の保険加入者であれば作業料が無料です。(一部保険のロードサービスを除く)

ディーラーや整備工場での外面修理は2000円~3000円が相場です。一方で、内面修理は実施していないお店が多いです。

その中でもタイヤ専門店であれば対応可能なケースが多いです。ホイールからタイヤを脱着する手間があるので、外面修理より内面修理の方が費用が高くなります。

■車のパンク修理にかかる時間の目安

パンクの修理にかかる時間の目安は外面修理の場合で15分~45分、内面修理の場合で45分~90分です。

外面修理の作業時間そのものは、早ければ10分も掛からないですが、パンクの場所を見つけたり修理後の状態の確認のために時間がかかります。

内面修理は、すでに解説しているようにホイールからのタイヤ脱着を伴う分、作業時間も長くなります。

■自分でパンク修理をする場合に気を付けたいこと

パンク修理するときに気を付けなければいけないポイントがいくつかあります。

事前に知っておくともしもの時に焦らずに済むので、パンク修理の経験がない方や今後する予定がない方もぜひ、目を通しておいていただきたいです。

▽車載のパンク修理キットの使用は慎重に

最近の車のほとんどがスペアタイヤの代わりに、応急のパンク修理キットが車載されています。専用の溶剤をバルブコアから注入し、これが穴を塞ぐことで応急処置ができるものです。

簡単にできますが修理可能なケースが限られており、タイヤと地面が接している「トレッド面」に小さい穴が開いている場合にのみ使用可能です。それ以外の場所や、穴が大きい場合には効果を発揮することが難しいです。

また、車載のパンク修理剤を使った応急処置はあくまで「応急」のため、使用後はタイヤにダメージがあるので早急にタイヤ交換が必要です。

ホイールの内側には撹拌された溶剤が付着しており、新しいタイヤを組み付ける前の清掃も大変です。(別途、工賃が必要なケースがある)

よって、車載のパンク修理剤を使用するのであれば、注意点を理解したうえでの慎重な判断のもと、以下の場合に限定することをおすすめします。

・効果があると考えられる場合にのみ、最後の手段として使用する
・修理剤が有効期限内であること(過ぎていると修理剤が硬化しており使用できないことがある)
・最低限、車屋まで持ち込むまでの走行にとどめる(長距離走行や高速走行は絶対NG)
・早急なタイヤ交換実施までがセット

▽パンク修理できない場所もあるので注意

パンク修理はかならずできるとは限りません。外面修理も内面修理も、タイヤが地面に接する「トレッド面」以外の修理は不可能です。

タイヤの角にあたる「ショルダー」や、側面にあたる「サイドウォール」は走行中にたわみの大きい場所で、なおかつゴムの厚みも薄いのでパンク修理したとしても、その負荷に耐えることができずに危険だからです。

また、ゴムが裂けるような傷のパンクや、エアバルブ部からのエア漏れによるパンクはパンク修理できません。

一見、修理が可能そうなネジや釘が刺さったようなパンクであっても、以下のようなケースは修理ができません。

・2箇所以上のパンクがあり、それぞれが近すぎる
・斜めに刺さっている(可能なケースと不可能なケースがある)
・パンク跡の径が補修材よりも大きい(目安:直径6mmほど)

▽【補足】ランフラットタイヤとは

輸入車や高級車を中心に「ランフラットタイヤ」と呼ばれる、パンク後も一定の速度以内であれば一定距離走行ができるタイヤを装着している車があります。

パンクした場合でも修理しないで整備工場などに走行して持ち込むことができる点が大きなメリットです。また、普通のタイヤと同じようにトレッド面であればパンク修理することが可能です。

■パンク修理とタイヤ交換どっちがいい?

パンク修理とタイヤ交換どちらが良いかの問いに対しては、交換することがベストの一択です。

ただし実際には外面修理後、修理箇所からのエア漏れがなければ、そのままタイヤを使用しても問題ないケースがほとんどです。

▽サイドウォールに損傷が見られるときは交換がおすすめ

パンクした状態(空気圧が極端に低い状態)で長距離走行をすると、タイヤのサイドウォールに強い負担がかかってしまい、全周に渡って擦れたような見た目のシワが入ります。

タイヤのサイドウォールは車を支えることができる強度が必要ですが、上記のような状態だと損傷によって強度が確保できない恐れがあり、バースト等のリスクも高くなります。

よって、パンクした箇所が修理可能な場所でも、サイドウォールにこの損傷が見られる場合は交換することを強くおすすめします。

▽修理ができないパンクの場合はタイヤ交換が必須

パンク修理ができる条件・範囲は限られているので、パンク修理ができないケースはタイヤの交換が必須となります。

タイヤ交換は最低限の場合でパンクしたタイヤ1本のみでも構いませんが、ほかのタイヤの劣化状態とバランスを考慮し、可能な限りタイヤの銘柄を合わせ、なおかつ左右同時に交換することをおすすめします。

これは車の運動性能がタイヤの違いにより左右で異なってしまうことを防ぐためです。

▽【補足】ホイールがNGでパンク修理できないケースの紹介

タイヤ以外の部分が原因でパンク修理できないケースとして以下のようなものがあります。

・ホイールリムの大幅な変形
・ホイールの割れ
・ホイールの錆による腐食

これらに該当するとき、ホイールの交換が必要になります。タイヤとホイールを縁石にヒットさせてパンクが発生したときなどが身近な例として挙げられます。

■車のパンク修理の方法

車のパンク修理は「外面修理」と「内面修理」に分けられます。ほとんどの場合で外面修理をおこなうことが一般的です。

▽外面修理の方法

外面修理はホイールにタイヤが組み付けられたままの状態で修理する方法です。手軽にできる修理方法で、応急修理と呼ばれることもあります。ロードサービスでのパンク修理も、基本的に外面修理です。

1.パンクしている箇所の異物を除去(異物が残っている場合)
2.パンク跡の穴に補修材を正確に挿入できるように、専用のスクリューリーマーで穴を拡げつつ均す(右回しで押し込み、右回しで抜く)
3.スクリューリーマーにセメント剤を適量塗布して、手順2と同じように押し込む
4.インサートニードルに補修材を取り付け、補修材にセメント剤を塗布する
5.補修材のついたインサートニードルをスクリューリーマーで開けた穴に対して真っ直ぐ奥まで差し込む
6.スクリューリーマーを真っ直ぐ引き抜く
7.タイヤ側に残った補修材の余分な箇所を切除する
8.空気を規定値入れて、修理箇所からエア漏れが無いか石鹸水を噴きかけて点検する

▽内面修理の方法

内面修理はホイールからタイヤを外して、タイヤの内側から修理をする方法です。外面修理よりも質の高い補修が可能ですが、ホイールからタイヤを外すためにタイヤチェンジャーが必要なので、一般的にDIYでは不可能な方法でお店に依頼するかたちとなります。

また、整備工場のなかでも内面修理は実施していないところが多いです。私も以前の職場、現在の職場といずれも外面修理のみで内面修理は対応していません。

1.車からタイヤを取り外す
2.ホイールからタイヤを外す
3.パンクしている箇所の異物を除去(異物が残っている場合)
4.パンク跡の穴に補修材を正確に挿入できるように、専用のスクリューリーマーで穴を拡げつつ均す
5.補修材のパッチが当たるタイヤの面をヤスリで削ることで、表面を均す
6.【手順5】の面を脱脂する
7.【手順5】の面に専用のセメント剤を塗布する
8.修理材をタイヤの内側からパンク跡の穴に挿入する
9.専用のローラーなどを使用してパッチ面をしっかりと押さえつける
10.パッチ周囲の【手順5】で表面を均したところに専用のインナーライナー補修剤を塗布する
11.タイヤ表面にはみ出た補修材を切除する
12.ホイールにタイヤを組み付け、ホイールバランスの計測、および調整の実施

■整備士のまとめ

車のタイヤパンク修理は外面修理での対応がほとんどです。パンクに気付いたときは安全のため無理に走行したりせず、JAFや保険のロードサービスに連絡しましょう。

会員であれば整備工場でおこなうパンク修理(外面修理)と同様の作業を無料で実施してもらえることもあるので相談してみましょう。

また、パンク修理ができない場合やパンクによるタイヤの極端な劣化・損傷が見られるときにはタイヤの交換が必須となります。交換の必要性の有無については、整備工場でのアドバイスを参考にしましょう。

(まいどなニュース/norico)