「夜中もずーっと泣いてた」「さみしくないように、コキンちゃんを入れた」
そんな言葉とともに投稿された動画が、Instagramで大きな反響を呼んでいます。
映っていたのは、保護されたばかりの小さな黒猫。声が枯れるほど鳴き続け、ようやく眠りについたときには、そばに一匹の“ぬいぐるみの友達”が寄り添っていました。
投稿したのは、広島で保護猫活動を行う「ねぎごま」さん(@negi.goma)。これまでに多くの猫を預かってきた彼女が、「この子の姿には胸が苦しくなった」と語る理由がありました。
■雨の中、ひとりで泣いていた子猫
黒猫を最初に見つけたのは、ねぎごまさんの知人でした。
「17時ごろに『小さな猫がずっと鳴いている』と連絡を受けて、すぐに車で30分かけて迎えに行きました。小さなカゴに入れられていましたが、ずっと大きな声で鳴いていて、人をまったく怖がらなかったんです」
キャリーケースに入れると鳴き止まず、仕方なく抱っこしたまま家まで帰ったといいます。その晩、猫は夜通し鳴き続け、声が枯れてしまいました。
「抱っこすれば鳴き止むけど、離すとまた鳴いてしまって。ほかの保護猫たちもいるので、ずっと抱えてあげることもできなくて…。せめて少しでも寂しくないようにと思って、同じくらいのサイズの“コキンちゃん”のぬいぐるみを入れました」
■翌朝、ぬいぐるみに寄り添って眠っていた
翌朝、泣き声が止まっていたので様子を見に行くと、黒猫は、コキンちゃんに寄り添って眠っていました。
「前を通るだけで鳴いていたのに、そのときは静かで。ゆっくり近づいたら、ぬいぐるみに体を寄せて寝ていたんです。見た瞬間、胸がギュッと苦しくなりました」
トイレを覚えられずに困っていた黒猫も、病院で診てもらいながら少しずつ慣れていきました。
「どこでしていいかわからなかったんでしょうね。今はちゃんとトイレでできるようになりました」
■そっくりな“兄弟猫”と奇跡の再会
そんなある日、ねぎごまさんはInstagramで見覚えのある黒猫を見つけます。
「顔も柄もそっくりで、しかも投稿主が同じ地域の方だったんです。気になってDMを送ってみたら、保護された場所がうちの子とほんの数百メートルの距離で-“兄弟だ”と思いました」
思い切って会いに行くと、声を聞いた瞬間に確信したといいます。
「家で聞いていたのとまったく同じ、絞り出すような鳴き声でした。その保護主さんにも『兄弟じゃろうね、ずっと鳴いてるから連れてきんさい』と言われて…」
一度は「離れたほうが幸せかもしれない」と思い直しましたが、やはり見届けたいという気持ちが勝ち、最終的に兄弟2匹を一緒に育てることに。
「また一緒にいられるなんて、奇跡だと思いました」
■先住猫たちも“見守り隊”に
現在、2匹はすっかり落ち着き、ねぎごまさん宅の先住猫・ねぎちゃんとごまちゃんにも仲良くしてもらっているそう。
「見守り隊の2人が、赤ちゃん猫たちをそっと見ているんです。本当に優しくて、安心できる関係になっています」
コメント欄には「涙が出ました」「優しい世界」「助けてくれてありがとう」などの言葉が相次ぎました。
「まさかこんなに反響があるとは思いませんでした。共感してくれる人や、経験者のアドバイスもありがたかったです」
■「出会いはすべて巡り合わせ」
黒猫たちは今後、里親を募集する予定だといいます。
「我が家にはすでに2匹いますので、増やすことはできません。でも、預かりボランティアとして、せっかく来てくれた子たちが幸せになれるように見守っていきます」
ねぎごまさんは最後に、静かにこう話しました。
「どの猫との出会いも“巡り合わせ”だと思います。できることは限られていますが、命と真剣に向き合う人が少しずつ増えたらいいなと願っています」
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)