在宅ワーク中心の30代女性が出会ったのは、ペットショップのソファ下で小さく震える生後6カ月のチワワだった。
抱くと静かに身を預け、吠えない。その子の名前は「ちまき」ちゃん。Instagramで“東京のカフェを全制覇するチワワ”として人気のアカウント「わんグルメ旅-ちまき(@chimaki.cafe)」 を運営する飼い主さんは、生体価格5万3850円で表示されていたその小さな命を迎えた。“ビビり犬”だった愛犬との日々を通じて見つけた新しい幸せを語る。
■最初は“超ビビり”で散歩もできなかった
迎えた当初は、テレビの音にも怯えてケージから出られず、散歩もごはんもダメ。飼い主さんはフード量を見直し、トッピングや銘柄を変えるなど試行錯誤。早朝の静かな時間に外へ連れ出し、少しずつ慣らしていった。
転機は近所の緑道だった。ほかの犬と並んで歩くうちに一歩、また一歩と前に出られるように。今では1時間も歩き、外でおやつも食べられる“人大好きパリピチワワ”に。「ちまきちゃんが頑張る姿に、私のほうが励まされています」と笑う。
■在宅ワークで孤独だった日々が変わった
「ただいま」と帰宅すると、荷物を置くまで控えめに見つめ、座ると尻尾を振って寄ってくる。悲しい日は涙を舐めてくれる。在宅勤務で人と話さない日も多かったが、ちまきちゃんと散歩を始めてから、地域の人と挨拶を交わし、犬友のLINEグループもできた。「チワワ会」に参加したことで交友が広がり、今ではカフェや旅行を楽しむ仲間もできた。
「一人と一匹の暮らしが、私の世界を広げてくれた。前は外食もほとんどしなかったのに、今はちまきと一緒ならどこへでも行けます」
■命を迎える準備--保険と年齢の“現実的な計算”
「迎える責任は準備から」と彼女は話す。徒歩圏に病院やトリミングサロン、ペットホテルがあるかを事前に確認し、万一に備えて窓口精算のペット保険に加入。さらに、老犬期の介護を考え、自分の年齢と10~20年先の未来を計算してからお迎えを決めた。避妊手術は回復が早い腹腔鏡を選び、「痛みを最小限にしてあげたかった」と振り返る。「情報を集めて選ぶことも、愛情の形だと思います」
■SNSで広がった“命への気づき”
Instagramの投稿は3日でフォロワーが約1800人増える反響に。「素敵な出会い」「命の重みを考えた」などのコメントが相次いだ。彼女は誤解を避けるため、「生体価格はお迎え総額ではない」「店は殺処分ゼロに取り組む」と補足。「生体販売反対も、どの子にも罪はないも、どちらも正しい。ただ、どの子も幸せであってほしい--その願いは同じです」と語った。
コメント欄には保護犬・保護猫の飼い主からも共感の声が寄せられ、命と暮らすことの意味を改めて考える場となった。
■七五三の準備中、「これからも人に会わせたい」
まもなく10月22日で3歳になるちまきちゃんは、七五三の着物をオーダー中。人に会うのが大好きな性格で、「これからもたくさんお出かけして、いろんな人に会わせてあげたい」と話す。年間100軒のペースで「愛犬と行けるカフェ」を巡る記録も続けていくつもりだ。「家族になれて本当によかった」--その言葉は、多くの人に“命と暮らす幸せ”を静かに伝えている。
(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)

























