ボサボサ髪で無理にヒゲを生やしていた男性→7年後「本当の自分」に近づいたノンバイナリーモデルの衝撃の姿に「素晴らしい」「こうも変わるもんか」
ボサボサ髪で無理にヒゲを生やしていた男性→7年後「本当の自分」に近づいたノンバイナリーモデルの衝撃の姿に「素晴らしい」「こうも変わるもんか」

制服をきっちりと着こなしたメガネ姿の男子高校生が、7年間の月日を経てレディースファッションに身を包みハイヒールを履いた立ち姿をInstagramで披露すると、その美しい変貌ぶりに多くの反響が寄せられました。

投稿主は、ノンバイナリーモデルとして活動する、22歳の岡本舵楽(おかもと・だらく)さん(@nemu.itte)。「垢抜けで有名になりたい」--そんな一言とともに、かつての自分と今の姿を並べた“ビフォーアフター動画”を公開した背景や、自身のジェンダーとの向き合い方について話を聞きました。

「気づいた時にはもう、“女性らしい見た目になりたい”という感情はあったんです」

小学校~中学校の9年間、クラスメイトから容姿を否定され、それが原因でいじめられていたという岡本さん。当時の経験から、「女性らしい見た目になりたい」と願いながらも、それを口に出すことすらできなかったと振り返ります。

「高校に進学後も、女性らしい見た目になれるように努力したら、またいじめられるかもしれない…と思って。わざと髪をボサボサにしたり、伸びないヒゲを無理矢理生やしたり、ヨレヨレの服を着たり。理想の容姿になるための行動とは真逆の行動をとって、自分自身が感じていた性別の違和感に対して、素直に向き合うことを拒否していました」

しかしその後、自分のコンプレックスを減らしたいと思うようになり、度数の強い分厚いメガネからコンタクトレンズに変えたところ、周囲から「元の顔が綺麗だからもっとおしゃれして欲しい」「元の顔がかっこいいからもっと髪を整えたらいいのに」と言われ始めたのだそう。

しかし当時は「いじられている」「笑いものにされている」と感じてしまい、無視したり、時には反発したりしたこともあったといいます。

それから数年後、関係者から声を掛けられ、モデル未経験者でも私服で参加できるファッションショーに出演する機会を得ることに。その際、かつて自分の容姿を褒めてくれた人がいたことを思い出したそうです。

「そこで、一回くらいは『本来の自分の姿』になりたいと思いました。鏡を見ては、『こんなの本当の自分じゃない』と毎日思い続けてきたんです。

もし学生時代にいじめを受けていなかったら…、もし自分の容姿が大嫌いじゃなかったら…。そんな空想から“今頃きっと自分はこんな容姿だったはず”という構想をして、服を買い、プロの手でメイクをしてもらってファッションショーに出演しました」

すると、他の出演者たちから容姿をたくさん褒めてもらい、このショーをきっかけに自分の見た目や存在を初めて肯定できたといいます。

「やっと、高校生の頃に僕の容姿を褒めてくれていた人達の言葉が本当だったことに気づきました」

その後、自身の性別に対する違和感にしっかりと向き合い、病院を受診すると「性同一性障害」と診断されたと明かします。そして診断結果を受けた岡本さんが選択したのは、メンズ・ウィメンズ・ユニセックスと、幅広いジャンルのファッションを着こなす「ノンバイナリーモデル」という道でした。

「モデル活動において“自分らしさ”を表現したことはあまりないです。基本的には自我を出さずに、僕を起用してくださった方が僕に求めているものを出せるように努めていますね。それが“男性らしさ”なのか、”女性らしさ”なのか、”ジェンダーレスな世界観”なのか、それ以外なのか-。それをすぐに表現できるよう、常に心がけています」

モデル活動を行うにあたり、垢抜けのためにスキンケアや二重埋没手術、全身脱毛に加え、髪を伸ばし、メイクの研究も重ねたという岡本さん。SNSでは、中性的な見た目になったことで、「性転換手術をしたのでは」といった誤解を寄せられることがあるのだそう。「『垢抜けじゃなくて手術しただけだろ』みたいなコメントをいただいた時は、僕の垢抜けは性別をも超越できたのかな…、と複雑ながらも嬉しい気持ちになりました」と語ります。

「ジェンダーレス系の活動者が『好きなファッションを楽しもう』と発信すると、『元の容姿が整っているから似合うだけ。普通の人がやったら笑われる』というコメントがよく見られます。でも、僕の過去の写真を見てもらえばわかりますが、昔の僕は決して『似合う容姿』ではありませんでした。努力によって容姿が変わり、モデルとして活動する今があるのです。過去の自分と同じように、容姿に対して諦めている人や悩んでいる人に『“岡本 舵楽”という前例がありますよ』と伝えたくて、垢抜け動画をSNSで発信しています」

またSNSで発信を続けるなかで印象的だったのは、アメリカ人のトランスジェンダーの方から「頑張ってね!この人生は難しいけど自由なのよ!」という日本語でのコメントが届いたことだといいます。

「すごく心が揺さぶられました。この言葉は、生きる上で、辛くなったり苦しくなったりした時に思い出すようにしています」

一方で、「SNSでは"LGBTQ当事者=面倒な人"というイメージがつきつつあると思いますが、それはごく少数。大多数は他者に迷惑をかけません。ただ、当事者が声高に言っても説得力がないので、積極的には発信しませんけどね」と話す岡本さんからは、自分のアイデンティティを大切にしながら、周囲への配慮を欠かさないという誠実な姿勢も見られます。

「あくまで僕のことは『“男性”として扱ってほしい』と関係者の皆様には、強調して言うようにしています。僕はトランスジェンダーですが、性転換手術は行っておらず、生物学上は“男性”です。トランスジェンダーを自認する方が女性用施設に入る事例がニュースになることがありますが、僕はそのような行為には賛同できないという立場です。そのため、誤解を避けるためにも、この点については一貫した考えを持っています」

最後に、ジェンダーや容姿に悩む読者に向けて、岡本さんの経験を通したアドバイスをもらいました。

「自分を否定・攻撃する人と一緒にいると、自分が嫌いになってしまいます。自分を肯定し、褒めてくれる人との時間を増やしてください。そうすると、短所だと思っていたことが『実は長所だった』と気付くことも。その長所をどう活かすか考えてみると、きっと色々な案が浮かぶはずです。

浮かんだ案が本当に進みたい道かはわかりませんが、『物は試し』の気持ちで、一つずつ実践してみてください。失敗したら休んで、また自分のペースで進み出す…そんな風に続けていけば成功体験が積み重なり、理想の自分に近づいていくはず。せっかく生まれてきたなら、伸びしろを楽しんで生きましょう」