「批判ではなく発生情報の共有を」飼い主への願い(photoACより「ACpapa」さん撮影、イメージ画像)
「批判ではなく発生情報の共有を」飼い主への願い(photoACより「ACpapa」さん撮影、イメージ画像)

「レプトスピラ症が飯能河原付近で確認されました。川や池、湿地帯での散歩は注意してください」

そんな緊急の呼びかけが、東京の動物保護団体「BeSail_Animal(ビセイル アニマル)」の代表・福本美帆さん(@rescue_dog_cat)のInstagram投稿で広がっています。

投稿では、埼玉県飯能市で感染が確認された犬の存在が明かされ、飼い主たちの間で大きな反響を呼びました。

■「命の危険がある」知人からの連絡で即発信

福本さんが投稿したのは、知人の犬が感染の疑いで病院に運ばれたという知らせを受けた直後でした。

「知人から『命の危険がある』と連絡を受けました。検査結果を待つ間も治療が進められていて、感染が確定したと同時に急いで発信しました」

感染した犬の飼い主は現在も懸命に看病を続けており、幸い回復傾向にあるといいます。「今回のケースでは、飼い主さんが異変にすぐ気づき、獣医師が迅速にレプトスピラを疑って治療に入ってくださったことが大きかった」と福本さんは話します。

■レプトスピラ症とは?川や土壌から感染、致死率50%

レプトスピラ症は、レプトスピラ属という細菌が感染する人獣共通感染症。感染動物(主にドブネズミなど)の尿が水や土壌を汚染し、それを犬や人が口や皮膚から取り込むことで感染します。

「初期症状は食欲不振、元気消失、発熱、嘔吐など。その後、肝臓や腎臓の機能が低下して黄疸や出血が見られます。致死率は約50%と高く、治療が遅れると命を落とす危険があります」

■関東でも増加 “5種ワクチン”では防げない

「関東では発生しない」と思われがちですが、近年は東京を含む関東地方でも毎年のように感染例が確認されています。

「関東の多くの犬が接種している『5種ワクチン』には、レプトスピラは含まれていません。8種や10種にはレプトスピラの型が含まれますが、菌の種類が多いため、完全に防ぐことは難しいのです」

さらに、アウトドアブームで犬と一緒に川やキャンプに行く機会が増えたことも、感染リスクを高めているといいます。

■飼い主ができる“現実的な予防策”

福本さんは、「10種混合ワクチンの接種を検討してほしい」と話します。そのうえで、日常生活での注意点として次のように呼びかけています。

・ネズミが出る場所・水辺・湿地帯には近づかない
・公園などで水たまりの水をなめさせない
・川遊びよりも“おうちプール”が安全
・雨の日や雨上がりの散歩は避ける
・半年ごとに抗体を維持する接種スケジュールを検討する

「情報があふれる時代ですが、“誰かが言っていたから”ではなく、自分の犬に合う方法を考えてほしい。信頼できる獣医師と相談しながら判断してもらうのが一番です」

■「批判ではなく共有を」飼い主への願い

感染報告が出ると、時に飼い主を責める声が寄せられることもあるといいます。

「発生情報を共有するのは勇気がいることです。でも、隠してしまえば感染拡大を防げません。互いに非難するのではなく、“守るために知らせ合う”という意識を持ってほしいです」

「命をつなぐために」知っておくことから

「犬の健康管理に正解はありません。大切なのは、日々の観察と知識です」

福本さんはそう語ります。

「犬も人も命の重みは同じ。予防や注意喚起は“怖がらせるため”ではなく、“守るため”のもの。この情報が一匹でも多くの命を救うきっかけになればうれしいです」

(まいどなニュース特約・渡辺 晴子)