フリーランスの4割強「近年の物価上昇による影響で生活が苦しくなった」 ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)
フリーランスの4割強「近年の物価上昇による影響で生活が苦しくなった」 ※画像はイメージです(Peak River/stock.adobe.com)

日本労働組合総連合会(東京都千代田区)は、このほど「フリーランスとして働く人の意識・実態調査2025」を実施しました。同調査によると、4割強が「近年の物価上昇による影響で生活が苦しくなった」と回答したことがわかりました。また、「報酬が引き上げられていない」と答えた人が約9割にのぼりました。

調査は、フリーランスを本業として仕事をしている全国の20歳以上の男女1000人を対象として、2025年6月~7月の期間にインターネットで実施されました。

まず、「フリーランスとして働き始めたきっかけ」を聞いたところ、「好きなことを仕事にしたいから」(34.5%)、「場所や時間にとらわれずに自由に働きたいから」「自分の専門性を活かすため」(いずれも29.7%)が上位に挙がりました。

また、「フリーランスとしての働き方についての満足度」を聞いたところ、「仕事全体」では「満足している」は53.4%、「仕事内容・質」では60.9%、「労働時間」では58.0%、「働きがい・やりがい」では61.0%、「プライベートとの両立」では66.8%となった一方、「収入」では26.0%にとどまっています。

さらに、「フリーランスとしての働き方について、将来への展望」を聞いたところ、「ある」は27.0%、「ない」は30.4%となり、世代別にみると「将来への展望がある」は20代(42.9%)で多くなり、「ない」と回答した人は40代(36.9%)で多くなっています。

次に、「フリーランスの働き方の実態」について調べたところ、約4人に1人が「発注者からの仕事の依頼を断ることができない」(24.1%)と回答。

また、「仕事を行う場所、時間を決められたり、作業時間や休憩時間などを管理されている」と回答した割合を仕事内容別にみると、「事務・ビジネス関連」では4.4%だったのに対し、「暮らし・学び関連」では36.6%と、仕事内容によって作業場所や業務時間の管理状況に差がみられる結果となりました。

さらに、「仕事に使用する機械、器具等は発注者が用意している」と答えた人は「暮らし・学び関連」(36.6%)や「IT関連」(29.3%)、「からだ・健康関連」(26.3%)で高くなりました。

近年の物価上昇はフリーランスで働く人にどのような影響を及ぼしているのでしょうか。

調査の結果、「生活が苦しくなった」は33.4%、「業務に必要なコストが上昇した」は15.5%、「生活が苦しくなって、業務コストも上昇した」は12.3%となりました。

「生活が苦しくなった」と回答した人の割合は世代別では40代(52.7%)、仕事内容別では、クリエイティブ関連(66.7%)が最も高くなり、「業務コストが上昇した」は、60代以上(31.5%)、文化・芸能・芸術関連(32.4%)で最も高くなりました。

一方、「今年1月から5月までの間に、昨年の12月以前と比較して報酬は引き上げられた」と答えた人は10.2%にとどまり、「引き上げられていない/引き下げられた/やや引き下げられた/変わらない」の合計は実に89.8%にのぼることがわかりました。

仕事内容別にみると、「引き上げられた」の割合は、IT関連(16.2%)が最も高くなったのに対して、事務・ビジネス関連(4.4%)やクリエイティブ関連(4.8%)、からだ・健康関連(5.3%)では5%前後と低くなりました。

「引き上げられた」と回答した人からは、「生活が苦しいから作品の値段を上げざるを得なかった」(30代男性/文化・芸能・芸術関連)、「物価高を理由に自分から提案した(30代女性/その他)といった声が寄せられています。

2024年11月に施行された「フリーランス法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)の認知度」を調べたところ、「知っていて、内容も理解している」は39.0%、「聞いたことはあるが、内容は理解していない」は33.8%、「知らない」は27.2%でした。

フリーランス法を理解している人の「フリーランス法を知った方法」としては、「テレビ・ラジオ・新聞報道」(39.7%)、「公的機関のWebサイト、SNS、動画など」(36.4%)、「公的機関以外のWebサイト、SNS、動画など」(34.1%)などが上位となっています。

2024年1月の制度改正によって、加入対象が拡大され、業種・職種を問わず加入することができるようになった「労災保険の特別加入制度(※)」について聞いたところ、「知っている」と回答した人の割合は27.8%でした。

また、「労災保険の特別加入制度の利用意向」については、「すでに保険に加入している・利用したいと思う」は20.3%、「利用したいと思わない」は39.1%、「分からない」は40.6%となりました。

仕事内容別でみると、事務・ビジネス関連では、加入対象の拡大の認知率(44.1%)は最も高くなった一方、「すでに保険に加入している・利用したいと思う」(8.8%)は1割未満にとどまり、「利用したいと思わない」(54.4%)は半数を超えました。

(※)労災保険の特別加入制度とは、従来では労災保険への加入が認められなかった労働者以外の人のうち、業務の実態や災害の発生状況からみて、労働者に準じて保護することがふさわしいとみなされる人に、一定の要件のもとに労災保険に加入することを認めている制度。

労災保険の特別加入制度を「利用したいと思わない理由」としては、「金銭的な余裕がないから」(26.7%)、「制度がよく分からないから」(26.6%)、「健康保険証があるから」(25.0%)が上位に挙がり、なかでも「金銭的な余裕がないから」ではクリエイティブ関連が41.4%、暮らし・学び関連は48.4%で突出して高くなりました。

最後に、「普段、仕事に関する悩みの相談相手」を聞いたところ、「フリーランス仲間」(26.6%)や「同業者」(19.6%)、「友人」(16.7%)などが挙げられたものの、「相談する相手がいない」(43.3%)が最も多くなりました。

さらに、「個人では解決できない問題に対するために、フリーランス同士でつながりたいと思う」は27.9%、「つながりたいと思わない」は33.8%、「分からない」は38.3%という結果になり、「つながりたいと思う」と回答した人の割合は、20代(38.6%)が突出して高くなった一方で、「つながりたいと思わない」と回答した人の割合は、30代(40.3%)が他の世代と比べて高くなりました。