3年前の夏、キジトラ猫の「あんず」ちゃん(4歳・女の子)は、倉庫で出産していたところを保護されました。生まれつき片目が小さい小眼球という疾患を抱え、授乳を終えても里親が見つからずにいたといいます。そんなあんずちゃんに運命を感じたのが、Xユーザー・アシメEYEあんずさん(@asyme_anzu821)でした。
■「この子は私が幸せにする」──運命を感じた出会い
あんずちゃんは、今から3年前の夏頃、倉庫で子猫を生んでいるのを保護主さんが発見。保護され、授乳を終えるのを待ってTNRされる予定だったといいます。
「避妊手術を受けたあと、もといた場所に戻る予定だったそうです。でも、生まれつき片目に小眼球を患っているあんずは、他の猫からいじめられる可能性があったことや、とても人懐こい性格だったことから里親さんを探すことなったと聞きました」
当時、飼い主さんはコロナ禍で体調を崩し、療養をしながら保護猫の譲渡サイトを眺める日々を送っていました。「いつか保護猫と暮らしたい」と考え、自宅近くでお迎えしやすい子を探していたといいます。
「『1歳くらいの子がいいな』と思いながら探していたところ、あんずを含めて何匹かの候補がみつかりました。毎日、サイトを見ているうちにどんどん里親さんがみつかっていき、最後に残ったのがあんずだったのです」
ふと掲載期間を見ると、ちょうどその日が最終日であることを知った飼い主さん。同時に、あることを思い出しました。
「あんずは、祖母の家でかわいがられていたキジトラ猫のチャドによく似ていたんです。チャドは、7カ月前に虹の橋を渡ったばかりでーー私はいてもたってもいられなくなり、『この子は私が幸せにするべきなのでは…』という思いに駆られました」
飼い主さんは、あんずちゃんを迎えることを決意。早速、保護主さんに連絡をとり、あんずちゃんをお迎えする準備を始めました。
「キャットタワーやケージなどをそろえて、あんずが来る日を待ち侘びました」
■目薬が苦手でも元気いっぱい! 日課になった“お仕事”とは
あんずちゃんを迎え入れたのは、2022年8月21日。当時、あんずちゃんはじっと飼い主さんを見つめ、「どんな人なんだろう」と観察している様子だったといいます。
保護主さん宅では、3匹の猫と仲良く過ごしていたあんずちゃんは、夜になると鳴き始めたといいます。飼い主さんは「さみしいのかもしれない」と考え、そっと見守りました。
「翌日、撫でてみると、体をクネクネさせて嬉しそうにしてくれました。撫でられるのが好きだったようです。3日目にはおもちゃで遊んだり、カーテン裏にお気に入りの場所を見つけたりして、夜鳴きもしなくなりました」
飼い主さんが気がかりだったのは、あんずちゃんの左目のこと。生まれつきの小眼球により、少し白濁して色素沈着も見られました。早速、病院へ連れて行き、目薬を処方されましたが、思うように治療は進まなかったそうでーー
「よほど点眼が嫌だったのか、食欲が落ちてしまったため中止。先生の診断では、猫風邪の後遺症で小眼球になっている可能性もあるとのことで、経過を見守ることにしました。視野が狭く、ものが見えづらいのではと心配していましたが、あんずは驚くほど元気いっぱい。おもちゃをしっかり追いかけて遊び、ケージによじ登ったり、家中を走り回ったりしています」
あんずちゃんは、遊ぶのが大好き。飼い主さんにおもちゃを振ってほしいとき、「ワウ…ワウ…」と小さく鳴いてアピールすることもあるそうです。
「夜、私が寝る準備をしていても遊び足りないと、ひとりでおもちゃを転がしたり、大運動会を繰り広げたり…毎日、窓辺で“ニャルソック”をするので、私はそれを“お仕事”と呼ぶようになりました。お仕事中、声をかけても無視。しつこくすると怒られます(笑)。でも毎日、真剣に“ニャルソック”をしている姿がほほえましいです」
こうして、あんずちゃんと飼い主さんは、少しずつパートナーシップを築いていきました。あんずちゃんにとって大きな環境の変化であったことはもちろんですが、飼い主さんにとっても変わったことがあったといいます。
「あんずを迎えてからは、心が沈むことがあっても明るい気持ちを取り戻せるようになりました。私があんずによく話しかけるので、家の中がにぎやかになった気がします」
■もう外には戻らないーー“おうち大好きっ子”になったあんずちゃん
あんずちゃんは、現在推定4歳。おてんばでありながら、とても優しくて聡明な性格です。普段は甘えん坊で、家の中を元気いっぱいに走り回る姿が日常の癒しになっています。
「病院に連れて行くときは大暴れしますが、いざ診察となると『おとなしくて良い子だね~!』と言われます」
飼い主さんによると、あんずちゃんには“おうちっ子”な一面があるそう。玄関のチャイムが鳴ると、決まってカーテンの裏へ。外の世界には出たがらず、網戸越しに外のニオイに触れるのが好きなようです。
「あるとき、私が網戸に触れた瞬間、外れてしまうハプニングがありました。『あんずが逃げてしまう!』と焦りましたが、当のあんずは部屋の中央に逃げて、『早く網戸を直して』と訴えるような顔をしていてーー今でも窓を開けてもベランダにすら出ません。そんな姿を見ると、『お外での暮らしが大変だったんだね』と思います」
今も遊ぶのが大好きなあんずちゃん。飼い主さんのそばにおもちゃを持ってきては、「遊ぼう!」とアピールします。ある日の深夜、いつものように遊びに誘ってきたあんずちゃんに異変がーー
「あんずが、片足をひきずっていたんです。翌日、すぐ病院へ連れて行きましたが、幸い、異常なし。翌日には、家中を走り回っていました。あのときは心配のあまり泣いてしまって…その元気な姿を見て本当にホッとしました(笑)」
あんずちゃんは、今ではすっかり家族の中心になりました。「あんずが来てから毎日笑って楽しくすごしています」と語る飼い主さん。その出会いから現在を振り返って、今、飼い主さんが思うこととはーー
「小眼球で見えづらかったり、背中に毛が生えないほどのケガをしたり、子猫を産んだり…暑さや寒さはもちろん、日々のご飯の心配など、お外での暮らしは本当に大変だったと思います。あんずには『これからは私が全力で守るので、安心しておてんばで元気に楽しく過ごしてね。でもケガだけは注意してね! 大好きだよ!』と伝えたいですね」
(まいどなニュース特約・梨木 香奈)
























