「なんば」の「ん」は「n」「m」どっち?
「なんば」の「ん」は「n」「m」どっち?

日常生活で何気なく見ている街の風景は当たり前すぎて、細かいところへ意識が向きにくい。しかし、よく見ると、小さな違和感に気づくことがある。

大阪の大動脈・御堂筋「難波交差点」の東西両側、御堂筋を挟んだ位置に交差点標示(以下、標示)がある。これのローマ字表記をあらためて見比べてみると、「Nanba」と「Namba」の「ん」表記に「n」と「m」の2パターンあることがわかる。

これは、いったいどういうわけなのか? どちらかが間違っているのか、あるいはどちらも正しいのか、疑問を解くために調べてみた。

■規定ではヘボン式ローマ字で表記

その標示は、御堂筋の西側が「Nanba」、東側が「Namba」となっている。「n」と「m」なので、意識して見ないと違いに気づくのは難しい。

御堂筋は国道だが、維持管理は大阪市が行っている。大阪市建設局(以下、建設局)によると、文法的には「Namba」が正しいとのこと。

「一般社団法人全国道路標識・標示業協会が発行している『道路標識ハンドブック』において、固有名詞のローマ字表記についてはヘボン式を使用するという規定があります」

ヘボン式では、基本的に「ん」は「n」で表記されるが、「B」「M」「P」の前にくる「ん」は「n」ではなく「m」で表記される。

例えば、「難波(なんば)⇒Namba」、「本間(ほんま)⇒Homma」、三瓶(さんぺい)⇒Sampei」となる。

ならば、なぜ「Nanba」の表記があるのか?

「結論から申しますと、理由は分からないのが正直なところです。設置された時期も、別々だと思います」

また、製作を受注した業者が間違えることもないという。

「間違ってはいけないので、製作する前に受注者の方からこういう配置でいきますよというレイアウトを図面でもらいまして、承諾したもので発注をかけています」

Googleマップのストリートビューで、同じ場所の過去画像を探してみたところ、2023年2月の画像に、現在は「Namba」表記になっている東側の標示が、設置場所は現在より少しだけズレるが「Nanba」の表記になっていた。

建設局によると、これまで「Nanba」と表記されていた標示は、更新のタイミングで「Namba」表記へ修正するとのこと。それまでは、もうしばらく「Nanba」表記の標示が残る。

ただ、このまま「Nanba」の表記でも何ら不都合はないはずだから、ご愛敬で街の「間違い探し」的なスポットとして残しておいても面白いかもしれない。

余談ながら、難波に駅をもつ鉄道各社、すなわち大阪メトロ、JR西日本、近畿日本鉄道、阪神電気鉄道、南海電気鉄道(順不同)の駅名表記は、いずれも「Namba」だった。

(まいどなニュース特約・平藤 清刀)