自分の本当の姿を見せる勇気がなくて…(斉田朝さん提供)
自分の本当の姿を見せる勇気がなくて…(斉田朝さん提供)

いつも会いたい大好きな人でも、言葉が足かせとなって会えなくなってしまうことがあるかもしれません。斉田朝さんの作品『制服に春うらら』は、そんな『言葉』が原因で祖母と距離を取っていた女子高生の想いが描かれています。

主人公・知風ららは、幼いころ祖母にスカートを作ってもらいます。祖母はスカート姿のららを見て「いつかあなたのお嫁さん姿を見るのが楽しみだわぁ」とうれしそうに語っていました。

そして現在、ららは高校生になりました。今日のららはどこか思いつめた様子で、友人・ミタビが心配しています。実は祖母から「制服姿を見たい」とメールが届いており、ららはそのことで悩んでいたのです。

ららは「私の制服姿なんて可愛くないし、がっかりさせるだろうし…」と話すと、ミタビは「ようするに見せたくないんだ」と返します。続けてミタビは「いっそ見せに行ったら?」「取り繕ったチカちゃん(ららのあだ名)しか見らんないのはおばあちゃんさみしくない?」と言いました。

その言葉に思い動かされたららは、ミタビとともに新幹線に乗り込みます。今まで嫌なことから逃げてきたららは、「自分を変える時が来ただけだ」と考えていましたが、ミタビは「自分を変えないための旅だねぇ」とららに告げました。

その後、2人は入院中の祖母のもとに到着します。祖母のもとに現れたららの姿は、パンツスタイルの制服姿でした。

ららは祖母に、可愛いスカートやドレスに興味を持てなかったこと、お嫁さん姿も多分見せられないことを告白します。ららは中学生のころスカートが苦痛だったため、パンツスタイルが許可されている高校に通います。

しかし祖母は、たびたび「制服姿が見てみたいわあとってもかわいいんでしょうね」と、ららにメールを送っていました。祖母が大好きだったららは、祖母に嫌われたくないためにその姿を見せられなかったのです。

「がっかりさせてごめんね…」と言葉を詰まらせるららに、祖母はそっとららの頭をなでます。祖母は「スマートであったかくて素敵ねえそれ」「いい時代になったのねえ」と、ららに話しました。

祖母は自分の時代のように、女の子は可愛い洋服を着てお嫁さんになるのが幸せだと思っていました。ららのことを知ろうとしなかったと祖母は謝り、「ららちゃんの好きな格好本当に素敵よ」と話します。

2人は抱擁し、ららはかつて作ってくれたスカートが嬉しかったことを伝えました。その後、祖母は一緒に来たミタビに会いたいと話し、同じくパンツスタイル制服のミタビが病室にやってきます。

ららの祖母とも仲良くなったミタビは、ららと祖母のツーショット写真を撮っていたようです。退院した祖母がスマートフォンを買うと、ららはその写真を祖母に送るのでした。

読者からは「素敵なお話…」「おばあちゃんが元気になってよかった」などの声が挙がっています。そこで、作者の斉田朝さんに話を聞きました。

■好きなものを好きというのにそんなに身構えなくてもいい

-作品を描いたきっかけについてお聞かせください

自分自身も学生時代にスカートが少し苦手な時期があったため、近年は制服の選択肢が増えてきていい時代の変化だな~と思ったことがきっかけのひとつです。また、純粋にパンツスタイルの女性キャラがかっこよくて好きというのもあります。

-表現やセリフなどこだわった部分はありますか

ミタビ(主人公の友人)がチカ(主人公)に向けたセリフは、なんてことない、重すぎない塩梅になるようにしました。「好きなものを好きと言うのに、そんなに身構えなくていいんだよ」と気楽に背中を押すような雰囲気を目指しました。

ミタビのキャラデザを可愛い系にしたのも、スカートのほうが似合うと周りに思われていそうだけど、その時着たいものを好きに着ている、という自己の解放の象徴的なものにしたかったからです。

-この作品を通じて、とくに伝えたかった想いがあればぜひ教えてください

人目を気にしたり誰かの期待に沿おうとして自分を偽ることは、自分を守ると同時にすり減らしてしまうものだと私は思います。適度に息抜きや発散をしたり、誰かに相談してみたりしながら、本来の自分を尊重、応援できれば、日々をより楽しく過ごせる気がするので、そういうエールを少しでも表現できていたら嬉しいです。

(海川 まこと/漫画収集家)