SNSみたいにキラキラできない! ※画像はイメージです(kapinon/AdobeStock)
SNSみたいにキラキラできない! ※画像はイメージです(kapinon/AdobeStock)

都内で暮らすAさん(30代)は、2歳の娘の食事に悩んでいました。娘は野菜はほとんど食べず、白いご飯やから揚げなど好きなものしか食べません。

困り果てたAさんは、ほかの人はどんな食事をあげているのか気になりネットで検索してみました。SNSをみると、彩り豊かな野菜を使った手作りごはんや、「無添加」「栄養満点」と紹介された子ども向けの食事が並びます。見た目も美しく、「こんな食事を毎日用意できたら理想だな」と感じました。

しかし、現実の食事は思い通りにいきません。「今日はブロッコリーを食べてくれるかな」と期待して出しても、娘は少しも食べずに拒否することもあります。結局、食べてくれるものを優先して用意する日も少なくありません。

そんな日々が続いているAさんは、SNSで栄養バランスや無添加にこだわった“理想のごはん”を見るたび、「栄養を完璧に整えなければ」「きちんとした食事を作らなければ」とプレッシャーを感じてしまうのでした。

Aさんのように子どもの食事で困っている人は、子どもの食事をどこまで気にすればよいのでしょうか。栄養を気にしすぎることで起こり得る問題や、「無添加」「完璧な栄養」は毎日の食事に必要なのか、管理栄養士の村中一帆さんに聞きました。

■食事は親子で楽しむ時間

ー子どもの食事で栄養を気にしすぎると、親や子どもにどのような影響が出ることがありますか?

子どもの食事で栄養を気にしすぎると、まず親御さん自身が「ちゃんと食べさせなければ」「理想的な献立にしなければ」と強いプレッシャーを抱えやすくなります。すると、食事の時間が本来の「親子で安心して食べる時間」ではなく、評価や緊張の時間になってしまうことがあります。

厚生労働省や農林水産省も、子どもの食事では栄養面だけでなく「一緒に楽しく食べること」が大切だと示しています。

また、親の不安や焦りは子どもにも伝わりやすく、「食べなさい」「これも食べて」と声かけが増えることで、食事そのものが負担になる場合があります。ストレスが続くと、自律神経のバランスが乱れ、胃腸の不調につながることも知られています。

栄養を考えること自体は大切ですが、気にしすぎて親子ともにしんどくなるなら、本末転倒です。まずは“食卓が安心できる場所であること”を優先して良いと思います。 

ー「無添加」や「完璧な栄養」は、毎日の食事で必要なのでしょうか?

結論からいうと、「無添加」や「完璧な栄養」を毎日求める必要はありません。子どもの食事は、1食ごとに完璧を目指すより、数日から1週間くらいの単位で全体のバランスを見ていくことが現実的です。

特に子育て中の家庭では、仕事、家事、育児が重なる中で、毎回理想通りの食事を用意するのは簡単ではありません。農林水産省も、乳幼児のいる世帯では時間などの制約から、市販食品を一部取り入れながら食事を準備している実態を示しています。

「無添加」を意識したい、「できるだけ栄養を整えたい」という考え方自体はとても良いことです。ただ、それが続かず苦しくなってしまうなら、毎日の食事としては少しハードルが高すぎることもあります。

大切なのは、無理なく継続できること、そして親子で楽しく食べられることです。納豆、卵、みそ汁など、手間をかけすぎなくても栄養を補える方法はたくさんあります。“完璧”より“続けられること”を大事にしてほしいです。

ー 子どもが偏食の場合、まず優先して摂りたい栄養は何ですか?

偏食がある子どもで、まず優先して意識したい栄養のひとつは鉄です。

鉄は、赤血球のヘモグロビンの材料となる大切な栄養素で、不足すると貧血だけでなく、疲れやすさや活動性の低下などにつながることがあります。特に乳幼児期は成長が盛んなため、鉄の必要性が高い時期です。

厚生労働省の「授乳・離乳の支援ガイド」でも、乳児期以降は鉄欠乏に配慮する重要性が示されています。

白いご飯やから揚げなど、食べられるものに偏っている場合でも、すぐに完璧を目指さなくて大丈夫です。まずは、赤身の肉や魚、卵、大豆製品、納豆、豆腐など、比較的取り入れやすい食品を少しずつ食卓に出していくことがおすすめです。

食べない日があっても問題ありません。「食べられるものを土台にしながら、鉄を意識して少しずつ広げる」という考え方で十分です。

◆村中 一帆(むらなか・かずほ) 管理栄養士
離乳食・幼児食を中心に、子育て家庭の食の悩みに寄り添う管理栄養士。無理なく続けられる栄養の整え方や、親子が楽しく食べられる食卓づくりを提案している。

(まいどなニュース特約・長澤 芳子)